我が家のトイレ、洗面所といった水回りにはリノリウムタイルを敷いている。
今回、このリノリウムを紹介したいと思う。
リノリウムには百五十年もの歴史がある。
日本に昔から畳があるようにリノリウムはイギリスで生まれ、北欧で古くから愛用され世界中に広まった。
質感は塩化ビニルシート(以下:塩ビ)とは似ているが全く別ものである。
古い話になるが2002年(H14)、ニューズウィーク誌で「人類を変えた発明」というテーマで
人類史において画期的と思われる発明品の特集が組まれたことがあった。
火薬や製紙・羅針盤・コンピューター・DNAなど画期的な発明ばかりがリストアップされた中で、インテリア商品から唯一
「リノリウム」が選ばれていたのである。このことからリノリウムの評価は欧米では極めて高いことがわかる。
もちろん日本でも明治中頃から昭和30年頃までは床材の主役であり、各地の建築物にリノリウムが続々と採用されていた。
だが昭和30年代から始まる高度経済成長では塩ビの時代を迎え、これと反比例してリノリウム市場は縮小された。
理由は塩ビ床材のコストの安さと施工性が良いことが大きい。
リノリウムは施工が難しくリノリウム施工が出来て初めて一人前と、床施工職人が口癖のように語るほどだ。
しかし、環境共生時代を迎えてリノリウムの魅力が再注目され、再び住宅に取り入れられつつある。
見直された理由は、耐久性もさることながら原料が持続可能な自然素材のみで作られていると言うことだろう。
リノリウムは主原料の亜麻の種から採れた亜麻仁油(あまにゆ)を煮沸・酸化させてリノキシン(Lynoxn)を作り、
これにコルク粉・木粉・石灰岩・ロジン(松樹脂)・顔料(これも天然色素)を加えたものを黄麻(ジュート)に圧着し作られている。
亜麻は、麻より柔らかくかつ強靭で上等な繊維を持つ一年草で、その種子から採れた亜麻仁油は
食用(フラックスシードオイル)としても販売されている。
他にも、絵の具や石鹸の原料、他にはケガをした時に傷にあてる油紙や、ぜんそくの治療薬として胸に塗って
使用される事もあるくらい身近で安全な素材なのである。
また、コルク樫の樹皮を粉砕したコルク粉も同様に木の持つ自然の再生力で繰り返し採取でき、ロジンはマツ科の植物の樹液である
松脂(まつやに)を蒸留して得られるもので、樹木自体の成長を妨げることなく松から抽出される。
このほかに色彩作りに貢献している木粉、炭酸カルシウムを主原料とする石灰岩をはじめ色をつける顔料も含めて、
すべてにおいて天然の材料であり、生産時のエネルギーも塩ビの半分以下、ホルムアルデヒドの発生原因となる可塑剤などの
化学物質も一切使用せず作られているのだ。
因みに、ラテン語の亜麻(linum)油(oleum)からリノリウム(linoleum)と名付けられたそうだ。
環境に関しては、不要となった際に仮に焼却しても有害物質を出さず、二酸化炭素は亜麻が吸収したものが排出される程度。
そのまま埋めても落ち葉のごとく100%土に還る、まさにサスティナブルな素材だ。
価格は塩化ビニールクロスの安い物と比べると2倍とやや高めだが、耐用年数は手入れ次第では塩ビは15年程度だが、リノリウムは
その6倍以上も長持ちする。
2~3年に1回ワックスをかけるなど手入れをしていれば、日本では国重要文化財の旧京都府庁舎の大会議室に施工されているが、
施工後100年以上が経過しているにも拘わらず立派に残っている実績がある。
その安全性・環境負荷の少なさとともに、長い目で見ても満足のいく素材ではなかろうか。
こうしてリノリウムが再評価されたのはしごく当然で、その意味では環境適応素材の原点でもあるリノリウムを知る事は温故知新とも言える。
上にも一部あげたがリノリウムのおおよそ次のようにな特徴がある。
・リピート可能な難枯渇性資源で作られている。
・優れた抗菌性:トイレ、洗面所はもちろん、キッチンでもその高い抗菌性が使用に適している。
・耐熱性:自然素材にもかかわらずタバコの熱にも溶けず焦げにくく、僅かに残った痕跡も、単一素材のためスチールウールなどで擦れば消える。
・優れた耐久性:施工されたリノリウムは一般の塩ビ床材よりも硬く、断面が単層構造となっているため表面剥離が起こりにくく、
軽い傷であれば表面を削り取ることもできる。(削った後も同じ模様が出てくるので、傷が目立たない)
・帯静電気性:静電気が起こりにくく、ホコリを寄せつけないため、床を清潔に保つことができる。
・優れた断熱効果と柔軟性:木質系充填材(コルク)のおかげで柔軟で、一般の塩ビ床材と較べて断熱性にも優れている。
・エコサイクル性:製造段階で必要なエネルギー・二酸化炭素排出量はともに塩ビの約半分。
原料のうち顔料以外は再生可能で、廃棄時には焼却することができ、その際にも有害物質を発生させない。
土に埋めることも可能です、自然素材なので土中に廃棄してもバクテリアによってすみやかに自然に還元される。
(ただし剥がしたリノリウムは建築廃材なので、法律に従った処理が前提となる)
以上のようにメリットを多数持つ床材だが、
・自然素材ゆえコスト削減がしにくく高い。(塩ビの約2倍)
・製造に手間と時間がかかる。
・施工の難易度が高い。
・自然素材特有の色差や臭いがある。(臭いは施工後除々になくなります)
(製造したては黄色味がかっているが、紫外線で変色しやすいため、サンプルも日に当てて変化を確認すべし)
・水やアルカリ成分に弱い。(アルカリ性の床維持剤や剥離剤を使用すると黄変することがある。
一度黄変してしまうと元に戻すのは非常に困難、黄変を防ぐには専用のワックスを塗る必要がある)
・国内で生産されていないため、欧州製のものとなる。
というデメリットも抱えている。
現在、国産品はなく、すべてドイツやオランダからの輸入品となっているが、国内のビニール系床材総合カタログの多くに
記載されている。
日々の手入れは、ほうきや掃除機を使用して、床の土や埃を取りのぞき、それでも取れない汚れはタオルを固く絞って
拭く程度で済む。どうしても洗剤を使う際ははアルカリ性を避け(黄変するため)中性洗剤を使用する。
2~3年に1度、専用ワックスを塗布すると長持ちする。(専用ワックスも天然素材でできており汚水処理が不要。
自然の中で微生物により分解される)
最近では病院や学校以外でも風合いの良さや耐久性、抗菌性などの効果の面から、新築時やリフォーム時に使用されるケースも
増えてきている。
デザインも飽きの来ない独特の模様で、また顔料で染まりやすく60色以上と色も豊富で型押し模様の入ったものもあり、
様々な家に合う床材だと思う。
子供は床に四つんばいになったり転がったりするし、背も低いため、床からの影響をとても受けやすい。
抗菌効果や静電気を起こさないので埃もたまらず、喘息やアレルギー症の人の体にもやさしい自然素材のリノリウム。
床材は新築時やリフォームの時にしか利用できないと考えてしまうが、タイルカーペットとしても利用することはできる。
50×50のシートのものと、2メートル幅くらいのロールもあり、内装インテリアなどの「サンゲツ」では「ウンボロタイル」という
名前で販売されている。サンゲツではサンプルもあり、東急ハンズの床材コーナーでも商品の取り寄せはしてもらえる。
へこみにくく、傷がつきにくいためキャスター椅子の床傷防止床材としても優秀だ。
また、このリノリウムは床材だけではなく、壁材や、家具にも使われている。
一見地味な素材だが、今後こういったエコ素材はブームになっていくのではと思っている。
子供と地球の未来のためにも、健康にも環境にも良い素材で家をつくっていきたい。
我が家のトイレ、洗面所といった水回りにはリノリウムタイルを敷いている。
今回、このリノリウムを紹介したいと思う。
リノリウムには百五十年もの歴史がある。
日本に昔から畳があるようにリノリウムはイギリスで生まれ、北欧で古くから愛用され世界中に広まった。
質感は塩化ビニルシート(以下:塩ビ)とは似ているが全く別ものである。
古い話になるが2002年(H14)、ニューズウィーク誌で「人類を変えた発明」というテーマで
人類史において画期的と思われる発明品の特集が組まれたことがあった。
火薬や製紙・羅針盤・コンピューター・DNAなど画期的な発明ばかりがリストアップされた中で、インテリア商品から唯一
「リノリウム」が選ばれていたのである。このことからリノリウムの評価は欧米では極めて高いことがわかる。
もちろん日本でも明治中頃から昭和30年頃までは床材の主役であり、各地の建築物にリノリウムが続々と採用されていた。
だが昭和30年代から始まる高度経済成長では塩ビの時代を迎え、これと反比例してリノリウム市場は縮小された。
理由は塩ビ床材のコストの安さと施工性が良いことが大きい。
リノリウムは施工が難しくリノリウム施工が出来て初めて一人前と、床施工職人が口癖のように語るほどだ。
しかし、環境共生時代を迎えてリノリウムの魅力が再注目され、再び住宅に取り入れられつつある。
見直された理由は、耐久性もさることながら原料が持続可能な自然素材のみで作られていると言うことだろう。
リノリウムは主原料の亜麻の種から採れた亜麻仁油(あまにゆ)を煮沸・酸化させてリノキシン(Lynoxn)を作り、
これにコルク粉・木粉・石灰岩・ロジン(松樹脂)・顔料(これも天然色素)を加えたものを黄麻(ジュート)に圧着し作られている。
亜麻は、麻より柔らかくかつ強靭で上等な繊維を持つ一年草で、その種子から採れた亜麻仁油は
食用(フラックスシードオイル)としても販売されている。
他にも、絵の具や石鹸の原料、他にはケガをした時に傷にあてる油紙や、ぜんそくの治療薬として胸に塗って
使用される事もあるくらい身近で安全な素材なのである。
また、コルク樫の樹皮を粉砕したコルク粉も同様に木の持つ自然の再生力で繰り返し採取でき、ロジンはマツ科の植物の樹液である
松脂(まつやに)を蒸留して得られるもので、樹木自体の成長を妨げることなく松から抽出される。
このほかに色彩作りに貢献している木粉、炭酸カルシウムを主原料とする石灰岩をはじめ色をつける顔料も含めて、
すべてにおいて天然の材料であり、生産時のエネルギーも塩ビの半分以下、ホルムアルデヒドの発生原因となる可塑剤などの
化学物質も一切使用せず作られているのだ。
因みに、ラテン語の亜麻(linum)油(oleum)からリノリウム(linoleum)と名付けられたそうだ。
環境に関しては、不要となった際に仮に焼却しても有害物質を出さず、二酸化炭素は亜麻が吸収したものが排出される程度。
そのまま埋めても落ち葉のごとく100%土に還る、まさにサスティナブルな素材だ。
価格は塩化ビニールクロスの安い物と比べると2倍とやや高めだが、耐用年数は手入れ次第では塩ビは15年程度だが、リノリウムは
その6倍以上も長持ちする。
2~3年に1回ワックスをかけるなど手入れをしていれば、日本では国重要文化財の旧京都府庁舎の大会議室に施工されているが、
施工後100年以上が経過しているにも拘わらず立派に残っている実績がある。
その安全性・環境負荷の少なさとともに、長い目で見ても満足のいく素材ではなかろうか。
こうしてリノリウムが再評価されたのはしごく当然で、その意味では環境適応素材の原点でもあるリノリウムを知る事は温故知新とも言える。
上にも一部あげたがリノリウムのおおよそ次のようにな特徴がある。
・リピート可能な難枯渇性資源で作られている。
・優れた抗菌性:トイレ、洗面所はもちろん、キッチンでもその高い抗菌性が使用に適している。
・耐熱性:自然素材にもかかわらずタバコの熱にも溶けず焦げにくく、僅かに残った痕跡も、単一素材のためスチールウールなどで擦れば消える。
・優れた耐久性:施工されたリノリウムは一般の塩ビ床材よりも硬く、断面が単層構造となっているため表面剥離が起こりにくく、
軽い傷であれば表面を削り取ることもできる。(削った後も同じ模様が出てくるので、傷が目立たない)
・帯静電気性:静電気が起こりにくく、ホコリを寄せつけないため、床を清潔に保つことができる。
・優れた断熱効果と柔軟性:木質系充填材(コルク)のおかげで柔軟で、一般の塩ビ床材と較べて断熱性にも優れている。
・エコサイクル性:製造段階で必要なエネルギー・二酸化炭素排出量はともに塩ビの約半分。
原料のうち顔料以外は再生可能で、廃棄時には焼却することができ、その際にも有害物質を発生させない。
土に埋めることも可能です、自然素材なので土中に廃棄してもバクテリアによってすみやかに自然に還元される。
(ただし剥がしたリノリウムは建築廃材なので、法律に従った処理が前提となる)
以上のようにメリットを多数持つ床材だが、
・自然素材ゆえコスト削減がしにくく高い。(塩ビの約2倍)
・製造に手間と時間がかかる。
・施工の難易度が高い。
・自然素材特有の色差や臭いがある。(臭いは施工後除々になくなります)
(製造したては黄色味がかっているが、紫外線で変色しやすいため、サンプルも日に当てて変化を確認すべし)
・水やアルカリ成分に弱い。(アルカリ性の床維持剤や剥離剤を使用すると黄変することがある。
一度黄変してしまうと元に戻すのは非常に困難、黄変を防ぐには専用のワックスを塗る必要がある)
・国内で生産されていないため、欧州製のものとなる。
というデメリットも抱えている。
現在、国産品はなく、すべてドイツやオランダからの輸入品となっているが、国内のビニール系床材総合カタログの多くに
記載されている。
日々の手入れは、ほうきや掃除機を使用して、床の土や埃を取りのぞき、それでも取れない汚れはタオルを固く絞って
拭く程度で済む。どうしても洗剤を使う際ははアルカリ性を避け(黄変するため)中性洗剤を使用する。
2~3年に1度、専用ワックスを塗布すると長持ちする。(専用ワックスも天然素材でできており汚水処理が不要。
自然の中で微生物により分解される)
最近では病院や学校以外でも風合いの良さや耐久性、抗菌性などの効果の面から、新築時やリフォーム時に使用されるケースも
増えてきている。
デザインも飽きの来ない独特の模様で、また顔料で染まりやすく60色以上と色も豊富で型押し模様の入ったものもあり、
様々な家に合う床材だと思う。
子供は床に四つんばいになったり転がったりするし、背も低いため、床からの影響をとても受けやすい。
抗菌効果や静電気を起こさないので埃もたまらず、喘息やアレルギー症の人の体にもやさしい自然素材のリノリウム。
床材は新築時やリフォームの時にしか利用できないと考えてしまうが、タイルカーペットとしても利用することはできる。
50×50のシートのものと、2メートル幅くらいのロールもあり、内装インテリアなどの「サンゲツ」では「ウンボロタイル」という
名前で販売されている。サンゲツではサンプルもあり、東急ハンズの床材コーナーでも商品の取り寄せはしてもらえる。
へこみにくく、傷がつきにくいためキャスター椅子の床傷防止床材としても優秀だ。
また、このリノリウムは床材だけではなく、壁材や、家具にも使われている。
デスク1200 KF-25<フォルミオ>
一見地味な素材だが、今後こういったエコ素材はブームになっていくのではと思っている。
子供と地球の未来のためにも、健康にも環境にも良い素材で家をつくっていきたい。