【人力検索かきつばた杯】#65


お題:「しゅうまつ」「きぼう」
から想像したショートストーリーを回答ください。

・本文やタイトルに直接キーワードを使う縛りはありません。連想できればOK。読んでわからなければ聞きます。
・2つとも1話の中に含めること。

〆切:2014/8/9(土)23:00~ ※開催者都合により変動します。応相談。
自動〆切前に終了しますのでご了承ください。

====
補足事項:(ポイントに興味のない方は読み飛ばしてOK)
1)内容が一定の基準を満たさない回答は基本点もカットします。(開催者判断)
2)開催者連想元ネタとの一致は、原則として採点対象外ですのでお好みで。
3)キーワードをタイトルに使う縛りはありません。
4)〆切前の修正履歴は採点に影響しません。採点は〆切後の投稿作について実施します。
5)作品の長さは2000字前後を目安としますが、長短は採点に影響しません。

回答の条件
  • 1人5回まで
  • 登録:
  • 終了:2014/08/13 17:30:12
※ 有料アンケート・ポイント付き質問機能は2023年2月28日に終了しました。

ベストアンサー

id:sokyo No.4

回答回数1377ベストアンサー獲得回数97

ポイント84pt

『尖った人になる』

チープなマンガみたいで申し訳ないんだけど、高3のとき、俺は進路希望を白紙で出した。未来のことを考えるのが心底嫌だった。
思えば、高校受験のときも進路に希望なんてなかった。塾の先生の言う通りにしたら、まあ《県内一の進学校》に合格した。
あれから3年。倒したはずのボスは、パワーアップして帰ってきた。また俺にのしかかる、進路希望という重圧として。

俺ら軽音部には3種類の人間がいた。音楽ガチ勢、勉強ガチ勢、そして、けいおん!ガチ勢だ。
音楽ガチ勢は、毎日普通に練習して音楽極めてた。合間のトークはもちろん音楽談義で、しかも洋楽とか普通に絡んでくるから、せいぜいDragon Ashあたり止まりの俺には完全に無理ゲだった。このうち一組は去年インディーズでCD出して、ナタリー載ってたりした。ゲス極の隣だ。本当にすごいと思うんで聴いてください(ステマ)。
次に勉強ガチ勢ですが、この人たちは2年あたりから数が減り始め、3年になったら完全に消失あそばれました。放課後にエレキを繋がずに弾きながら教室で駄弁ってて、トークの内容は「大航海時代と鎖国との関係」だったりした。だいたいこういう奴らは要領いいから、なんだかんだ演奏もうまい。3年への春休みで全滅したけど。
最後にけいおん!ガチ勢だけど、こいつらは1年でみんな来なくなった。最初のうちは「ギー太」がなんとかと言ってギブソンを買うものの、いつの間にか来なくなり、青い看板のお店へと消えていった。こういう奴らはFree!を見たら水泳を始め、ワンピースを見たら海賊業を始めるんだろうか。いいけど。

それはともかく、俺はというと、実はどれにも属さなかった。というか、属せなかった。
目指すところは音楽ガチ勢なんだろうけど、ガチなガチ勢には知識も技術も手が届かず、2年になってからはギターから逃げるようにラップを始め、後輩を引き連れて先輩風を吹かすぐらいのことしかしてない。
それはそれで日々楽しかったし、たまには校外でもライブやって、下手なりにステージはいい場所だって実感したりした。打ち上げと称してサイゼで深夜までドリンクバーで粘った。大富豪を始めたらさすがに追い出された。

3年になって、気付くとそんな馬鹿をやってるのは俺だけになっていた。
残りのみんなはたいてい勉強(一部は音楽)の道に時間を割き、それなりに成果を上げていっていた。俺だって勉強しなくはなかったものの、もちろん成績は単調減少を遂げた。
そんな俺に、ついに奴がやってきたのだ。その名は、進路希望調査用紙。俺は期限ぎりぎりまで引っ張って、空欄で出した。
そしたら親に連絡が行ったらしい。ウチは共働きで、父親が単身赴任だったから、こういう話はとりあえず母親に連絡が行く。進路希望を携えて、母親の仕事が休みの週末に三者面することになった。
のだけれど、俺は母親に、進路の話なんかしたことがなかった。
何度も言うけど、未来のことを考えるのは本当に嫌だったのだ。

「で、何したいわけ?」
母親は言った。
「ラップ」
俺はふざけて答えた。へらへらした。怒られるんじゃないかと思った。てかそうして欲しかった。
でも違った。
「なんだ。じゃ、それでいいじゃん」
母親は、あっさり言ったのだ。
「え?」
「え、じゃないよ。音楽やりたいんでしょ。やればいいじゃない」
「でも」
「何? ガッコ行ってお勉強したいわけ?」
俺は口ごもった。
「いや、そう、言われるかと、思って」
「あんたは勉強したいの? ラップやりたいの?」
「…ラップやりたい」
「ラップは好きなの?」
「…好きだ」
「じゃあ、本気でやりな。それが、あんたの人生だ」
「…うん」
俺は頷いた。母親は、あ、と言ってから、最後に付け加えた。
「言っとくけど、ここでラップを選ぶってことは、それだけあんたの人生の選択肢が狭まるってことだ。けど、狭まった選択肢は、それだけ、尖りやすくなる。狭めたからには、尖った人になるんだよ。いいね」
話はそんな感じで、あっさり終わった。終わったけれど、これは終わりじゃなくて始まりなんだってことがさすがの俺でも分かった。
そんな風に思えたら、急に涙が出てきた。で、俺は子どもみたいに泣いた。「子どもみたい」っていうか、実際子どもなんだけど、何年もそんな風に振る舞ってこなかったから。いつも斜に構えて、友だちみたいに接してた。母親は俺の肩をとんとんと叩き続けた。そして俺が泣き止んだら、
「ほら、早く進路希望書いちゃいな」
と声をかけた。
「『ラップ』じゃなくて、『音楽』ぐらいにしといたら」
と母親は言ったけれど、俺はすすり上げながら「ラッパー」と書いた。母親は俺のことを小突いた。俺は笑った。母親も笑った。
その週末は三者面だった。俺は思った。
週末が、「終末」じゃなくてよかった、って。


ここにも、もしかしたら、俺と同じ境遇の人がいるかもしれないな。
でも先輩として言えることは、まあ、よく話し合って欲しいってことだ。
あのときは本当に、親にも先生にも感謝してる。この学校を出て、大学に行かせないなんて勇気のいる決断だから。
あとひとつお願いがある。こんな経緯のある人間も世の中にはいるから、ラッパーが親とか先生とかに感謝した曲を歌ったって、安易に揶揄しないでな。ちゃんと背景があるって知ってもらえたら、嬉しい。00
では、ご清聴ありがとう。最後に、一曲歌います。
みんなの進路選択がいいものになるよう願ってます。

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id:sokyo

青い看板

2014/08/14 11:36:32
id:gm91

わたしゃてっきりローソンのことかと思ってました・・・。納得。

2014/08/14 14:16:40

その他の回答3件)

id:grankoyan2 No.1

回答回数121ベストアンサー獲得回数34

ポイント38pt

ネットの世界には魔人がいる。コンテンツ名はアキネーターだ。

こちらが思い浮かべた人物を魔人が質問をすることによって当ててくるというただそれだけのゲームである。

わたしはついさきほど、週末ヒロインももいろクローバーの「高城れに」を思い浮かべて、魔人と二戦闘ったばかりである。
一戦目は泥仕合、二戦目は脆くも惨敗した。

ももクロでは分が悪い。AKBほどではないが全国区である。

ももクロメンバーで戦うのは魔人にとって容易すぎるはずだ。
わたしが勝てる希望は少ない。

そこで作戦を変更した。
わたしがとった策は卑怯ともとれるものだ。
ももクロの妹分、たこやきレインボー。まだまだ世間的には知名度の低い、関西ローカルといってもいいアイドルである。
そのメンバーで勝負することにしたのだ。

20問以内に当てられたら私の負け。そうでなければわたしの勝ちというルールを勝手に設定した。

いざ、魔人との勝負の時である。

魔人は問う。

「それは女の子であるか?」

背筋に冷たいものが走った。
わたしの思い浮かべた「掘くるみ」は中学生だ。もちろん女性だ。女子である。

まあ、これくらいはたまたまということだろう。

「はい」と私は短く答えた。

魔人の二問目だ。

「それはチーム、あるいはグループのメンバーか?」

悪寒が止まらない。もちろんたこやきレインボーというグループに所属しているのだ。

たばかるわけにはいかない。

そう、日本には、いや、世界には女性グループなどごまんとあるのだから。
その中でわたしが選んだのは知名度もまだまだ低いたこやきレインボーなのだから。

「はい……」

そう答えて魔人の質問を待つ。

「それはAKB48に関係しているか?」

妥当な質問だ。女性グループといえばその筆頭はAKB48だろう。残念ながら。
魔人の効率的な質問に寒気を覚えつつ、「いいえ」と答える。

魔人の四回目の質問が投げかけられた。

「それはミュージックステーションに出演したことがあるか?」

残念ながら答えはNOである。
「オーバーザたこやきレインボー」「なにわのはにわ」と2枚のシングルをリリースし、三枚目の発売を秋に控え、全国ツアーも敢行しているたこやきレインボー(通称:たこ虹)ではあるが、未だMステには出演していないのだ。

「いいえ、出演したことはありません」

しかしこれは良い傾向である。なぜなら、Mステに出たグループのほうが出ていないグループよりも圧倒的に少ないはずなのだ。
魔人を困惑させられたことだろう。

魔人からの五問めの質問は「その人物は実在するか?」というものだった。
「はい」とだけ答える。

今のところ、魔人が得た情報は少ない。グループでMステに出ていない女性というだけだ。
魔法少女などのアニメキャラや二次元やフィクションを省きに来たのだろう。
セーラームーンなどはももクロが主題歌を歌い、リニューアルされたところなのでタイムリーだ。

「その人物は10代であるか?」

なかなかに厳しい質問だ。
グループに所属していて、10代となればおのずと絞り込まれてくる。
が、こちらの優位は動かない。
何故なら、それはたこやきレインボーという魔人がひょっとすれば知りもしないアイドルグループのメンバーを勝負に使用しているからだ。
その程度の知名度のアイドルなら、残念ながらごまんといるのだ。

「はい」と答えつつ汗をぬぐう。
いや、魔人のペースダウンに汗は退いていた。

「名前に『な』が付きますか?」

唐突な質問であった。未だ7問目のはずだ。
まさか魔人はもう既に対象を絞り込み始めているのだろうか?
わたしは、たこ虹のメンバーを思い返した。
赤:奈良崎とわ(ならさき とわ  既に卒業)
紫:堀くるみ(ほり くるみ)
桃:彩木咲良(あやき さくら)
黄:清井咲希(きよい さき)
緑:根岸可蓮(ねぎし かれん)
青:春名真依(はるな まい)

『な』が付くのは赤と青の二人である。
そして、元レッドの「ならさき」はたこ虹で一番思い浮かべやすいメンバーでもある。
いや、しかしそれは考えすぎだろう。
いまだ、魔人はたこやきレインボーの「た」の字にも到達していないはずである。

そう信じつつ、「いいえ」と答えた。

「名前は全部で6文字か?」

8問目にしていやに具体的な質問だった。
メンバーで該当するのは、赤、桃、緑の三名。
仮に魔人がたこ虹にあたりをつけているのなら、すでに半分に絞り込まれたことになる。

――いや、しかし……まさかそんなことはないだろう

わたしが選んだのは「ほりくるみ」である。

「いいえ」

魔人は涼しい顔で次の質問を繰り出した。

「名前はすべて漢字か?」

これで9問目である。約半分だ。
やはり背筋を冷たいものが走る。

魔人がたこ虹に焦点を絞っているのであれば……だが、「な」が含まれず、6文字でなく、全て漢字でないメンバーは「掘くるみ」しか存在しない。

いや、たこ虹だ。大丈夫だ。
今後全国区に名を打って、甲子園で単独ライブを成功させるはずのポテンシャルを秘めたグループではあるが現時点でのたこ虹はそこまでの知名度はないはずだ。

気にすまい。魔人はまだ迷走しているはずだ。

わたしは自分にそう言い聞かせながら、
「いいえ」と答えた。

折り返しとなる10問目。

魔人は「その人物は日本人か?」と聞いてきた。

今更ながらの質問である。
ひょっとすれば魔人の中でなにか心当たりがあったのかもしれない。
が、それがはずれて今まさに方向転換、質問の練り直しをしているところであるのかもしれない。

もちろん答えは「はい」である。

魔人の能力にいささか疑問を持ち始めた。
噂に聞くほどの存在ではないのかもしれない。
あと10問持ちこたえられれば私の勝ちである。

「名前に「り」が入るのか?」
11問目はそんな問いだった。

やはり魔人は、既に絞り込みを始めているのだろうか?
しかし、たこ虹には至っていないはずだ。

確かに、「掘くるみ」には「り」が入る。
しかし、たこ虹であるなどという情報は今の今まで与えていない。

10代の女性グループでMステ未出演なんて山のように存在するはずだ。

「ほり」の「り」を確認しに来たなんてことはないはずだ。

震える声でわたしは「はい」と答える。

まだだ。まだ大丈夫だ。自分にそう言い聞かせる。

「5人組グループの一人なのか?」

魔人の12問目。元レッドのとわちゃんが抜けて、現状のたこ虹ちゃんは確かに5人グループだ。
だが……。
10代の女性5人組グループ。それはたこ虹だけではないはずだ。
残念ながら、わたしはあんまりアイドルに詳しくないので知らないが、他にもいるはずである。

魔人はたこ虹の存在を知っているかすら怪しいのだ。

「はい」と答えつつも、これが相手にとっての決め手にならないことを祈った。

「男女のグループか?」

魔人の13回目の質問にほっと一息入れる。

女性であることは既に吐露されてしまっているため、想定外の質問だったが、魔人はひょっとすると誰か別のグループを想定していたのかもしれない。

たこ虹はもちろん女性のみのグループである。というか、そもそも5人組の男女のグループなんて知らない。
そもそも5人組の10代のグループなんてしらないのだが。

とにかく、この質問で一気に絞り込むことはできないはずだ。

わたしは落ち着きを取戻りつつ「いいえ」と答えた。

まだ核心には迫られていない。
まだ大丈夫だ。

「名前に『村』が入る?」

やはりというか、魔人は見当違いな質問を繰り出してきた。

これで14問目である。勝利は近いのかもしれない。

このままのらりくらりと躱し続けていればわたしの勝ちが訪れるはずだ。

「いいえ」

しかし、15問目の質問でわたしは息を呑んだ。

「名前の最後が『み』で終わるのか?」

――堀くるみ……

まさか……。

いや、そんなバカな。偶然の一致であろう。
魔人の脳内――それはおそらくサーバー上の電子データにすぎないだろう――にたこ虹がインプットされている?
まさか。

既に魔人は多数の候補を除外してたこ虹に焦点を当てている?
いや、まさか。そんなそぶりは見せていないじゃないか?

「は……はい……」

魔人の顔がゆるんだような気がした。

魔人は更なる質問を繰り出す。

「マンチェスターでプレイしていたことがあるか?」

「は?」

「マンチェスターでプレイしていたことがあるか?」

思わず耳を疑った。

いや、無いし。女性グループだって言ったし。
いやとにかく、一問稼いだのだ。

魔人がどういう意図でこの質問をしてきたのかは不明だが、とにかく助かった。

「いいえ」

どこか自信に満ち溢れた声でわたしは答える。

この分であれば、目標の20問は達成できそうである。
たこ虹にはまだまだ距離がありそうだ。
すでに16問目だ。
あと4問で核心に迫られる可能性は限りなく少ないはずだ。

「真っ白な洗濯物が好きですか?」

こいつ馬鹿かと思った。こんな無駄な質問を繰り出すなんて。
とはいえ、わたしは堀くるみ(通称くーちゃん)が真っ白な洗濯物が好きかどうかは知らない。
そこでグーグル先生にお伺いを立ててみた。

『堀くるみ 真っ白な洗濯物』で検索してみたのである。

が、特にめぼしい情報がみつからなかった。

「わ、わかりません」わたしは正直に答えた。

とにかく、無駄に2問消費できたはずである。

あと3問だ。勝利は近い。

「物まねが得意か?」

これも難しい。やっていないことはないのだが、得意かどうかはわからない。

「わかりません」そう答えるのが精いっぱいだった。

「白っぽい作画ですか?」

もはや、魔人は迷走している。これは勝ちだ。19問目がこれである。

わたしの勝ちである。確信しつつ「いいえ」と答えた。

「仲間内では父親のような存在ですか?」

微妙な問いが続く。誰と勘違いしているのだろう? それすらわからない。

なんだかなあと思いつつ「多分違う」と答えた。

「しかくんですか?」

「は?」

「しかくんですか?」

「い、いいえ」

とにかく、これで21問目だ。魔人恐るるに足らずということだ。

「宇治松千夜が好きですか?」「いいえ」
「熊本に住んでいますか?」「いいえ」
「ツンデレですか?」「多分違う」
「階級はライト級?」「いいえ」

見当はずれな質問に気を抜いていたところだった。

魔人は高らかに笑いだした。

「お主が思い浮かべているのは「掘くるみ(たこやきレインボー)」じゃろう?」

「えっ?」

結論としては、計25問の末の回答であるために、勝敗としてはわたしの勝ちであるはずだ。

しかし、当てられたのは間違いない。

しかもたこ虹を連想させるような質問を一切出さずである。

何故か魔人が提示した写真は「堀くるみ」のものではなかったが(多分チームしゃちほこのピンクの子)、試合に勝ったが勝負には負けた気分に浸らされた。

思えば後半は、たこやきレインボーや堀くるみの情報が未だ少ない魔人が情報収集のために繰り出した質問だったのではなかろうか?
そう考えれば、「宇治松千夜が好きか?」や「ライト級か?」という質問を良く考えずに適当に答えてしまったのが申し訳なく思う。せめて「わからない」にしておくべきだったと思う。

とにかく、魔人の底力はたこ虹にとっての希望である。

週末ヒロインももいろクローバーの妹分、スターダストの最終兵器と謳われる彼女ら。

既にウィキペディアにも記事が存在し、魔人にすら知られているのだ。

甲子園での単独ライブも夢ではないのかもしれない。

~ fin ~

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id:grankoyan2

不評~。
今回は、あーきねーたーを使って、リアルタイムノンフィクションを書くという趣向だったのでごめんなさい。

2014/08/15 13:51:06
id:gm91

趣向はOK
しかし、手段なんか何だってよかとです。
なんかこう魂が抜けとる気がしたです。
次回に期待。

2014/08/15 14:46:48
id:kokiri385 No.2

回答回数65ベストアンサー獲得回数9

ポイント50pt

「週末の企望」

 アリスは目を覚ましましたが、脚は目を覚ましませんでした。
抓っても叩いても殴っても、うんともすんとも言いませんでした。
アリスの部屋は春でした。
日差しがあたたかく照らす朝でした。

 今日はカレンダーによれば土曜日。土曜日の嬉しいところは、寝坊をしても怒られないこと。土曜日の腹が立つところは。
こんこん。
「アリス、マリーよ。入ってもいいかしら?」
おや、いつも五月蠅いチビのマリーが来ると思ったら…誰か知らない女の人の声。ねぼすけの頭をガシガシと掻き毟ると…髪が綺麗に結わえられているではないか!!いつも無造作にリボンでポニーテールにしていたアリスの頭とは思えない、綺麗に手入れされた赤毛髪を三つ編みにし、上品に右肩に垂れていた。嫌で仕方が無かった赤毛がここまで美しく見えるとは、思わなかった…そして姿見に映る自分に驚いた!!ベッドから起き上がっていたのは見知らぬ女性…赤毛にそばかすのアリスとは別人のような、大人しく弱々しそうな女の人だった。
「アリス!!目を覚ましていたの!?ああ良かった!!神様、有難う御座います!!おばさん!!アリスが目を覚ましたわ!!おばさん!!」
部屋に入ってくるなり見知らぬ女性はとびあがって叫んだ。あの女性は自分をマリーと名乗り、自分に『病気が治ってやっと目を覚ました』ように接してきた。一体何が起こっているのだろう、ふと眠気が襲ってきたアリスは、女性が階段を駆け下りる音を聞きながら眠りについた。


 次に目覚めると部屋は夏の昼で、脚は相変わらず起きてはいなかった。記憶が曖昧だ。カレンダーを見るとまた土曜日だったが、少し理解のできない数字が四つ並んでいる。
「これじゃ私は1年と3か月も眠っていたことになるわ…とんだ眠り姫ね」
遠い昔に目覚めたときに、屋根から落ちて10年も目を覚まさなかったのだと、大人になったマリーに教わった気がした。そういえば近所に住む博士が亡くなったことや、いつも一緒だったお兄さんがお母さんを亡くして、独りになったという話も、3か月前に聞いたような気がした。どうやら記憶がくたくたの脳味噌とないまぜにされているらしい。時間の流れに違う順番でピースを置いてしまったようだった
「そういえば、歩けないのよね…落ちたから」
今度は優しく脚を撫でたが、やはり脚は知らぬ顔で寝ているらしかった。
 机の上には書きかけのノートがあった。どうやら色々と書きなぐったらしい。バラバラでぐちゃぐちゃで、どこが最初のメモだったかも覚えていない。
「アン・シャーリーはいないのよ、アリス。雨は喋るのよ、アリス。ニゲラの花は枯れたわ、アリス。風見鶏は泣くのよ、アリス………はん、あたしが、病人が書いたんだもの、意味なんて無いわね」
パサッと床に捨てられたノートは、輪郭をふやかして昼の日差しに光った。

 そういえば、もう精神科の医者がしばらく来ていない。それどころか、目が覚めた
というのに、普通の医者すら来ていない…?

それはまた強い眠気に掻き消された。


 季節は秋、時は夕暮れ。曜日は勿論土曜日で、病人のアリスにはちっとも温度なぞ感じられなくて、今までだってただ光の色だけで季節を推測した。窓の外は冷たい針葉樹ばかりなので、もともと季節感なぞ少しもない部屋で暮らしてきたのだけれど。
「目が覚めたと聞いて。少し話がしたくて」
珍しく、マリーの仲良しのお兄さんは一人で来ていた。病気で伏せがちだったお兄さんはもう素敵な男性になっていた。以前までのあの病弱な体は骨に肉が筋肉がつき、やっと『スレンダーでかっこいい』という体型になっていた。顔つきは精悍になっていた。惚れちゃうじゃない、とアリスはドキッとしたりもした。
「無口なお兄さんが珍しいのね。っていうか、あたしあなたの名前知らないわ」
「マリーの世界を壊さないために。マリーにとって僕はお兄さんでしかないんだって」
お兄さんは苦笑した。何よ、じゃああんたはマリーの何になりたいって言うつもり?
「あたしにとって、お兄さんは恋をしても良い人よ。すぐ別れると思うけど」
「嬉しいな。眠り姫が日に日に美しくなることに、僕は感動すら覚えていたんだ」
「お世辞なんていつのまに覚えてきたのよ。こっちが恥ずかしくなるじゃない!」
生まれて初めてアリスは自分に素直になれた気がした。小さな頃から癇癪持ちで、皆から悪い子だと言われ、精神科の先生が毎週部屋を訪れ、マリーやお兄さんには酷いことを言い捨て、医者に安楽死をさせてくれなどと叫び……そんなアリスは別人じゃないかと思えるほど、心に落ち着きがあった。
 体力のないアリスのために二人は少しの間しか話せなかったが、その短い時間はとても言葉では表せないようなあたたかさがあった。

 花は枯れて散るけれど、私はシャボン玉のように、美しく散りたいわ。

 眠気に誘われたアリスは、お兄さんに見守られて幸せそうに体を横たえた。


 冬の夜、アリスは声を聴きました。それは、いつか夢で見た友達の声に似ていました。


「アリスは幸せだったわ。大丈夫、アリスは幸せだったの」
マリーは静かに呟きました。お医者さんは一つ頷くと、アリスの両手を胸の上で組んでやりました。
「これで良かったのかしら」
と涙を流すアリスのお母さんを、マリーは強く抱きしめました。
「お医者さんが嫌いだったアリス。美しいものが好きだったアリス。素直になりたかったアリス。アリスの希望は、全部叶ったんだ」
お兄さんは机の上に置かれたノートを手に取りました。
「散るなら美しいときに、幸せな気持ちで。それがアリスの希望だから」

 アリスは不思議の国への入り口を、ようやく見つけられたのでした。

他1件のコメントを見る
id:gm91

ありがとうございます。
流れと言うかオチはいいと思いますが、落とし方がちょっと強引かな、と思いました。
あと、
「体力のないアリスのために二人は少しの間しか話せなかったが、その短い時間はとても言葉では表せないようなあたたかさがあった。

ここをもっと具体的に描けると、お話として盛り上がるのかなと思います。

余談ですが、追書に書かれたようなことは、読み手に対するご配慮だとは知りつつも、ちょっと野暮かなって思いますです。
読後の興が殺がれる感じがして損してると思います。
読み手が上手く気がつくように作中にうまくピリッと利かせるか、分かる人にわかればいい、と割り切って隠し味と割り切るか。

2014/08/13 17:31:03
id:kokiri385

講評ありがとうごじます。
今気付いたんですがまた人が死んでますね、気をつけよう…。
そこの匙加減は相変わらず下手くそなままですね;精進します。

2014/08/14 22:20:12
id:kobumari5296 No.3

回答回数60ベストアンサー獲得回数4

ポイント52pt

『光れ』

 東京二十三区に移り住んでから数か月たつが、未だに慣れないのがファミリーレストランだ。こんなに騒々しい中での食事なんて、初めて入店した時は大学生かなにかの団体客だと思い、何時までの予約ですか、と店員に聞いて、連れに大笑いされたことを覚えている。今こそ勝手は知ったが、深夜まで賑わいをみせるこの空間には、やはり慣れない。実家にいた十八年間は、食事は懐石料理が当たり前だった。侍女が碗を少しずつ持ってきて、何故か俺の部屋にやってくる双子の妹と、静かに食事を愉しむ。旬のものから通年食べられるものまで幅広く食した舌と、食の愉しみを覚えた脳は肥えていて、コツを掴めんだ自転車の運転のように、劣ることはあっても忘れることはできないだろう。
 俺の実家は多摩にある。幅広い分野に進出し、どの産業でも主力一派である坂本家だ。莫大な財産と絶大な権力を持っており、その当主の長男として生まれた俺は、自由奔放な妹に外食をせまられると、坂本一族経営の“高級料亭さか本”で五万円のコースをブラックカードで頼んでいた。もちろん部屋は、追加料金を払う日本庭園を臨む離れである。十八年間、それが当たり前だった。当たり前だと思っていた。それに比べて、この空間はまるで別世界だ。
「飛鳥」
 モスキート音にも似た騒々しさにイライラしてきたところで、待ち人がやってきた。初めてのファミリーレストランでの俺を大笑いした連れである。
「ソウちゃん、遅いよ。三十分遅刻」
「悪い悪い。今日も、たかだかファミレスで、可哀想なくらい顔色悪いね。飛鳥様」
「“様”、やめてよ。俺はもう、坂本家とは縁きったの。関係ないから」
「言うねえ」
 坂本奏。みんなに“ソウ”と呼ばれる彼の本名は、“かなで”という。俺と妹の家庭教師をやっていた、俺にとっては兄貴的存在だ。金髪で飄々としているが、頭も容姿もずば抜けて良い。これで性格が良ければギネス級だと思っている。親族の中でも外の世界を坂本家の異常さを知っている数少ない人間だ。
「俺は関係アリアリなんだけどなあ、君らが本家から抜け出して自由を手に入れた火の粉が、分家の俺にも飛んでるんだけど」
「……ほんっと、ソウちゃんって皮肉屋だよね」
「ウソウソ」
 ソウちゃんと会っていることを、妹は知らない。彼は、妹の想い人なのだ。本家にいた頃は、男と言えば俺や死んだ父ぐらいだったから、妹が恋に落ちるのは当然の言えば当然だった。周りに美人の侍女ばかりだった俺とは大違いだ。
長い坂本家の歴史でも数少ない中流家庭から嫁いだ母に聞かされた坂本家の外の世界を見たくて、母の葬儀の日に実家を抜け出して良かったと思う。ソウちゃんが家庭教師から外れてから毎日口にしていた言葉を、今は吐かなくなった。

『ソウちゃん、どうしているのかな』
 
 今はどう想っているのか分からないけれど、刺激的な大学生活をエンジョイしている様だし、妹も連れだしてと思っている。
「明日菜、元気?」
「元気も元気。アイツに元気じゃない時があると思う?」
「俺を想って泣いてないかな~と思って」
「想像力豊かだね」
「喜んでおくよ」
 カラン。氷の入ったレモン水のコップが鳴る。
「……坂本家、解体するかもしれないんだ」
「マジで?」
「大奥様の力で抑えられてるけれど、君らがいなくなったことは、大問題さ。連日の一族の会議で兄貴が呼び出されてるみたいだし」
「栄太さんが?おじさん達じゃなくて?」
「親父たちはもう歳だからさ。年齢的にも兄貴のがいいんだ」
「栄太さん、分家の早坂に婿に出たんだよね。いくつ歳が離れているんだっけ」
「三十」
「ワオ」
 喉が渇いて、レモン水をグイっと飲み干す。ドリアを運んできた店員に二杯目を薦められたが断った。口に運んだドリアは、いかにも大量生産の味がする。どこを食べても味が同じ。良くも悪くもない。同じものを頼んだソウちゃんは美味しそうに食べている。分家と本家でさえ、舌の感覚が違うのだ。
「坂本は本当に長いからね。盛者必衰じゃないけど、主が力をそがれると、忠誠を誓った下っ端は権力を奪おうとする。もう、この世の終末って感じだったよ。大奥様は毎日ピリピリしてて、この間なんて、亡くなった今日子奥様と飛鳥たちが終末の因子だとか言ってた。それこそ想像力旺盛だよな」
「……御免」
「いや、俺はいいことだと思ってる」
 すいません、レモン水もう一杯。ソウちゃんの声は優しく響いて良く通る。
「お前と明日菜が消えた今、閉鎖的だった内部に風が入ってきてえるんだ。一応坂本の姓をもつ俺が自由に外に出れるほど、大人たちは手一杯なんだ。そういう面では、お前らは革命を起こしたと思うわけ」
「革命ねえ」
「前にも言ったけど、お前らは確かに坂本の人間だ。でも、その前に日本に生まれた人間なんだよ。多摩に戻る戻らないは関係ない。人間は自由に生きていいはずなのに、その自由が不自由なんて、おかしいよなあ」
「……やっぱり、ソウちゃんと定期的に会ってるの、明日菜に隠しておいて正解だね」
「飛鳥が甘ぁいから、お兄ちゃん大好きっ子だもんな、明日菜」
「可愛い妹ですから」
「……やっぱりさ、俺はお前ら双子が、これからの坂本の希望の星だと思うんだ」
「星か。光らないよ」
「夢もなんもねぇな」
「ありがとう」
 二人同時にドリアのラスト一口を口の中に入れる。もぐもぐと口の中で躍らせる熱は既に消えたらしく、冷め切っていた。
「褒めてねえよ。さっき言った通り、坂本家に風を通したし、坂本の大人たちをかき回すことに成功した。さすが、亡くなった当主夫妻の子供だよ」
「希望の星とか、そういうの重いって」
「そんな風にとらえなくていいって。一口に星って言っても、恒星は自ら光るし、惑星は照らされても光る。そこにじっといるだけで希望の光を放てるのは、すごいことなんだ」
「……ソウちゃんってやっぱりすごい。あー、明日菜を連れてきたいな」
「俺はいいけどさ、明日菜が噴火するぞ」
「だね。じゃ、そろそろ帰るわ。帰って誰もいないと、アイツ怒るから」
「子供じゃん。じゃ、会計よろしく。またツケで」
「分かってるよ」
 俺とソウちゃんのこの密会は、俺の心の中に太陽光として補充されていく。自分で光って、明日菜も照らす。
「じゃ、また連絡するね」
「飛鳥」
「ひぇ?!」
 ガシッと肩を掴まれる。周りから好奇の目で見られているのを感じて、思わず素っ頓狂な声を出してしまった。
「飛鳥は恒星になれ。恒星が生きなきゃ、惑星は光らないんだからな」
 別れてまっすぐ家に向かう。夜空を見上げると、都心にしては珍しく星が綺麗に瞬いていた。終末の因子が始まりの希望になれる。自分の欲の為に抜け出した実家に未練を残していた心が軽くなるのを感じた。

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id:gm91

ありがとうございます。
さて定番の坂本家シリーズ、舞台に広がりが出てきていい感じになってきました。
お題の処理も王道で良かったです。(+5点)

ただちょっと、細かいところで色々気になった箇所が多かったです。(-2点)
・「食事は懐石料理が当たり前だった。」 ちょっと違和感あり。和食って意味で使ってる?
・舌は肥えるでいいですが、脳が肥えるという言い方は何かの奇病みたいです。
・「コースをブラックカードで頼んでいた。」
高級料亭には縁がない身分ですが、先払いの店って庶民的な感じがします。
あと、行きつけてる人は「高級料亭」って言わない気がする。

要は世間知らずのボンがカルチャーショックを受けているという描写だと理解しますが、飛鳥の一人称なのに、価値判断基準が庶民なのでちょっと違和感があるという話です。

2014/08/13 17:37:06
id:kobumari5296

講評ありがとうございます。
ご指摘の通り、舞台設定や情景描写が、やっぱり苦手です。
克服出来たら、もう少し伸びるのだろうけれど……
重箱の隅の隅の隅まで細やかに配慮したい(変な日本語ですが)
成長が亀並で困っております……

ありがとうございます!(ダッシュで逃走)←

2014/08/14 06:17:15
id:sokyo No.4

回答回数1377ベストアンサー獲得回数97ここでベストアンサー

ポイント84pt

『尖った人になる』

チープなマンガみたいで申し訳ないんだけど、高3のとき、俺は進路希望を白紙で出した。未来のことを考えるのが心底嫌だった。
思えば、高校受験のときも進路に希望なんてなかった。塾の先生の言う通りにしたら、まあ《県内一の進学校》に合格した。
あれから3年。倒したはずのボスは、パワーアップして帰ってきた。また俺にのしかかる、進路希望という重圧として。

俺ら軽音部には3種類の人間がいた。音楽ガチ勢、勉強ガチ勢、そして、けいおん!ガチ勢だ。
音楽ガチ勢は、毎日普通に練習して音楽極めてた。合間のトークはもちろん音楽談義で、しかも洋楽とか普通に絡んでくるから、せいぜいDragon Ashあたり止まりの俺には完全に無理ゲだった。このうち一組は去年インディーズでCD出して、ナタリー載ってたりした。ゲス極の隣だ。本当にすごいと思うんで聴いてください(ステマ)。
次に勉強ガチ勢ですが、この人たちは2年あたりから数が減り始め、3年になったら完全に消失あそばれました。放課後にエレキを繋がずに弾きながら教室で駄弁ってて、トークの内容は「大航海時代と鎖国との関係」だったりした。だいたいこういう奴らは要領いいから、なんだかんだ演奏もうまい。3年への春休みで全滅したけど。
最後にけいおん!ガチ勢だけど、こいつらは1年でみんな来なくなった。最初のうちは「ギー太」がなんとかと言ってギブソンを買うものの、いつの間にか来なくなり、青い看板のお店へと消えていった。こういう奴らはFree!を見たら水泳を始め、ワンピースを見たら海賊業を始めるんだろうか。いいけど。

それはともかく、俺はというと、実はどれにも属さなかった。というか、属せなかった。
目指すところは音楽ガチ勢なんだろうけど、ガチなガチ勢には知識も技術も手が届かず、2年になってからはギターから逃げるようにラップを始め、後輩を引き連れて先輩風を吹かすぐらいのことしかしてない。
それはそれで日々楽しかったし、たまには校外でもライブやって、下手なりにステージはいい場所だって実感したりした。打ち上げと称してサイゼで深夜までドリンクバーで粘った。大富豪を始めたらさすがに追い出された。

3年になって、気付くとそんな馬鹿をやってるのは俺だけになっていた。
残りのみんなはたいてい勉強(一部は音楽)の道に時間を割き、それなりに成果を上げていっていた。俺だって勉強しなくはなかったものの、もちろん成績は単調減少を遂げた。
そんな俺に、ついに奴がやってきたのだ。その名は、進路希望調査用紙。俺は期限ぎりぎりまで引っ張って、空欄で出した。
そしたら親に連絡が行ったらしい。ウチは共働きで、父親が単身赴任だったから、こういう話はとりあえず母親に連絡が行く。進路希望を携えて、母親の仕事が休みの週末に三者面することになった。
のだけれど、俺は母親に、進路の話なんかしたことがなかった。
何度も言うけど、未来のことを考えるのは本当に嫌だったのだ。

「で、何したいわけ?」
母親は言った。
「ラップ」
俺はふざけて答えた。へらへらした。怒られるんじゃないかと思った。てかそうして欲しかった。
でも違った。
「なんだ。じゃ、それでいいじゃん」
母親は、あっさり言ったのだ。
「え?」
「え、じゃないよ。音楽やりたいんでしょ。やればいいじゃない」
「でも」
「何? ガッコ行ってお勉強したいわけ?」
俺は口ごもった。
「いや、そう、言われるかと、思って」
「あんたは勉強したいの? ラップやりたいの?」
「…ラップやりたい」
「ラップは好きなの?」
「…好きだ」
「じゃあ、本気でやりな。それが、あんたの人生だ」
「…うん」
俺は頷いた。母親は、あ、と言ってから、最後に付け加えた。
「言っとくけど、ここでラップを選ぶってことは、それだけあんたの人生の選択肢が狭まるってことだ。けど、狭まった選択肢は、それだけ、尖りやすくなる。狭めたからには、尖った人になるんだよ。いいね」
話はそんな感じで、あっさり終わった。終わったけれど、これは終わりじゃなくて始まりなんだってことがさすがの俺でも分かった。
そんな風に思えたら、急に涙が出てきた。で、俺は子どもみたいに泣いた。「子どもみたい」っていうか、実際子どもなんだけど、何年もそんな風に振る舞ってこなかったから。いつも斜に構えて、友だちみたいに接してた。母親は俺の肩をとんとんと叩き続けた。そして俺が泣き止んだら、
「ほら、早く進路希望書いちゃいな」
と声をかけた。
「『ラップ』じゃなくて、『音楽』ぐらいにしといたら」
と母親は言ったけれど、俺はすすり上げながら「ラッパー」と書いた。母親は俺のことを小突いた。俺は笑った。母親も笑った。
その週末は三者面だった。俺は思った。
週末が、「終末」じゃなくてよかった、って。


ここにも、もしかしたら、俺と同じ境遇の人がいるかもしれないな。
でも先輩として言えることは、まあ、よく話し合って欲しいってことだ。
あのときは本当に、親にも先生にも感謝してる。この学校を出て、大学に行かせないなんて勇気のいる決断だから。
あとひとつお願いがある。こんな経緯のある人間も世の中にはいるから、ラッパーが親とか先生とかに感謝した曲を歌ったって、安易に揶揄しないでな。ちゃんと背景があるって知ってもらえたら、嬉しい。00
では、ご清聴ありがとう。最後に、一曲歌います。
みんなの進路選択がいいものになるよう願ってます。

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id:sokyo

青い看板

2014/08/14 11:36:32
id:gm91

わたしゃてっきりローソンのことかと思ってました・・・。納得。

2014/08/14 14:16:40
id:gm91

質問者から

GM912014/08/13 18:26:51

各位ありがとうございました。

講評と結果は後ほど

  • id:kokiri385
    初のリンクなんですけどうまくいってるかな?
  • id:gm91
    OK牧場
  • id:gm91
    一身上の都合により急拠帰省しますので、〆切は数日延期するかもしれません。また連絡します。
  • id:takejin
    週末を避けて、延期を希望します。
  • id:gm91
    今晩〆切予定でヨロシク
  • id:kobumari5296
    みなさん、お疲れ様ですー。
    そしてsokyoさん、おめっとうです。
  • id:sokyo
    やったね!♬☻☻♫•*¨*•.¸
    2連覇なんてもう一生できないって思ってました。みんな強いもん!
    こうなったら前人未到(たぶん)の3連覇目指してがんばりますので、
    どなたか夏が終わる前にもう一回開催お願いします☆★

    GM91さん、プライベートめっちゃ忙しそうなのにどうもありがとうございます♪
    またすぐ開催してくださってもいいんですよ〜??
  • id:gm91
    おめでとうございます。
    あっしは当分田舎と行ったり来たりになりそうなので、当分無理っぽいです。

    藤吉郎どんが速攻で宿題終わらせて、開催してくれるように流れ星にお願いしておきました。
  • id:shogo2469
    藤吉郎です。

    早速、66開催しました。
    q.hatena.ne.jp/1407993703
    みなさんのご投稿待ってます♫

    宿題をやりつつ、開催するぞー!(終わってないけど、もう少し)
  • id:gm91
    はやっ!
  • id:kokiri385
    sokyoさんおめでとうです!
    私も色々チャレンジしてみよう…!
  • id:kokiri385
    sokyoさんおめでとうです!
    私も色々チャレンジしてみよう…!
  • id:grankoyan2
    希望入れ忘れたけど、回答しようかどうか迷ってたやつです。

    http://necotoco.com/nyanc/bunfreeosaka_ug/kotohato/free/140816/2/work.php
    読んでいただけると嬉しい。

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