本来の使い方はvbanbooのご指摘のとおりでしょう。
大昔、祖母から割り算に便利だと聞いた記憶がありますので、紹介させていただきます。
父の実家は古くからの田舎の日用品店でして、祖母は6珠の算盤を使っていました。軸に針金がらせん状にからめてあって、振っても珠が動かないシロモノです。立てて客に見せながら計算していました。
それよりも、使わない珠があるのが不思議で、それについて聞くと、昔はこんなのも使っていたと言って、店の奥の化け物小屋のような納戸から7珠の算盤を出してきて、呪文を唱えながら、割り算の実演をしてくれました。ふーん。そのときはその程度でした。
#いつごろまで使っていたのでしょうか。誰から教わったのでしょうか。聞いておけばよかった。
祖母から亡くなった四半世紀前、ふと、そのときを思い出して、調べたことがあります。祖母の話を裏付ける資料は見つけられませんでしたが、割り算九九なるものがあることを知り、祖母の唱えた呪文は割り算九九(下のURL)だと推測しました。
http://ja.wikipedia.org/wiki/九九
算盤で割り算九九を使いながら割り算をするとき、一定の条件下で7珠が有効な場合があります。個人的にはここで納得しました。父や父の兄弟は、聞いたかも知れないが覚えていないと言っていました。
一定の条件とは、たとえば、「62で198を割る」場合です。この程度の割り算なら、ひと目、商に3を立てて終わりですが、説明のための例ということでご了解ください。
7珠では次のように珠を動かしながら割り算ができるはずです。
初期状態:[6|2]…[1|9|8]
算盤の適当な場所に割る数62が置かれ、適当な間隔をあけて割られる数198が置かれていることを表します。下で、13は1桁に5+5+3と入っている状態ですので、7珠でないと表現できません。各ステップの「呪文」の意味は後述します。
Ax:「六一下加四」→[6|2]…[1|13|8] (9に4を足す)
Ay:「二一が二」→[6|2]…[1|13|6] (8から2を引く)
Bx:「六進一進」→[6|2]…[2|7|6] (13から6を引いて、その上の桁の1に1を足す)
By:「二一が二」→[6|2]…[2|7|4] (6から2を引く)
Cx:「六進一進」→[6|2]…[3|1|4] (7から6を引いて、その上の桁の2に1を足す)
Cy:「二一が二」→[6|2]…[3|1|2] (4から2を引く)
以上で、62で198を割った答えは 3あまり12 となります。
xで使っているのは割り算九九、yで使っているのは掛け算九九です。
以下、意味の説明です。
Axでは、62の6と、198の1を見て、割り算九九の六の段の1の「六一下加四」を適用します。
「六一下加四」の基本操作は、[6]…[1|0]→[6]…[1|4]です。「下加四」は1はそのままにして下の桁に4を足せということです。これは、6で10を割ると 1あまり4 であることを示します。
算盤の割り算は、あまりの1桁上に商を立てていくためこういう言い方をするようです。また、割る数の桁数が余りの桁数になります。
Ayは、62の2の処置です。Axで商として1が立ったので、2×1の2を引いて完了です。このAyの結果[1|13|6]は、1あまり136 を表します。
あまりから見て割り算が未完了ですので、次に、62であまりの136を割りにいきます。
Bxでは、引き続き、割り算九九の六の段を見ますが、最も大きい数が6ですから、「六進一進」を適用します。
「六進一進」の基本操作は[6]…[0|6]→[6]…[1|0]で、これは6で6を割ると 1あまり0 であることを表します。
この1は商への追加分ですので、Byではこの1をそのまま使いますが、商の途中経過はAxの商と併せて2になります。
Byは、62の2の処置です。Bxの直接の商は1でしたので、2×1の2を引いて完了です。このByの結果[2|7|4]は、2あまり74 を表しています。
まだ割り算は未完了ですので、さらに、62であまりの74を割りにいきます。Bx、Byと類似しますので、説明省略します。
なお、wikiには「六進一進」とありますが、祖母はおそらく「六進一十」(ろくしんいんじゅう)のように言っただろうと思います。6で6を割ると10になる、ただし、この10は 1あまり0 を表します。調べていた当時、父は「二進一十」「三進一十」なら聞いたことがあると言っていました。
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しかし、割り算九九には「九八下加八」というのがあります。[9]…[8|0]→[9]…[8|8]、すなわち、9で80を割ると 8あまり8 の意味です。この8を足そうとする桁が9の場合も考えられるので、7珠の最大15では足りません。
つまり、7珠が割り算に対応した算盤とは言えません。
おばあちゃんの知恵袋だったのかも知れませんが、たぶん、こんな使い方をした人がいたということで紹介させていただきました。