中世ヨーロッパにおいて,フス派キリスト教徒が中心となった,いわゆる「フス戦争」では,
ターボル派のワゴンブルク戦術が大きな効果を上げました。
とんでもなく大成功した戦術なのですから,マネをする勢力があってもおかしくないと思いますが,
「フス戦争」のあと,ワゴンブルク戦術をマネする勢力がいなかったのは,なんででしょうか?
中世の騎士が真似しなかったのは,階級意識によるものかもしれませんが,
近代に近くなったら,オランダのオラニエ公や,スウェーデンのグスタフ・アドルフ王
あたりなら,取り入れてもよかったように思うのですが,なぜ,取り入れなかったのでしょうか。
15世紀にワゴンブルク戦術を取り入れた軍隊は複数あったようです。
The Age of Wars of Religion, 1000-1650: An Encyclopedia of Global Warfare and Civilization の 902 ページ、Wagenburg によれば、
などの例があるそうです。
ここでなぜ使用例が東ヨーロッパに集中しているか、ですが、Warwagons の "Why were warwagons limited to Eastern Europe?" によれば、理由は二つあります。
一つは地理的な問題。
ワゴンブルク戦術が効果を発揮するには、ステップ(大草原地帯)のような開けた平坦な土地が必要ですが、西ヨーロッパにはそういう土地が少なかった。
もう一つは兵士の構成の問題。
軍の主戦力が歩兵であればワゴンブルク戦術は有効ですが、16世紀にもなると野戦砲が開発され、主戦力に砲兵が加わります。
グスタフ・アドルフは(中略)野戦砲にも軽量な3ポンド砲を多量に採用した
三兵戦術 - Wikipedia
言うまでもなくワゴンブルク戦術は砲兵に弱いわけで、グスタフ・アドルフも戦術自体は知っていても採用しなかったという事でしょう。
ご参考になれば幸いです。