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●質問者: たけじん
●カテゴリ:芸術・文化・歴史 ネタ・ジョーク
○ 状態 :終了
└ 回答数 : 7/7件

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5 ● グラ娘。
●75ポイント ベストアンサー

月からの贈り物

「ねぇ、お兄ちゃん? なに読んでるの? ねえってば!」
妹が僕と本との間に顔を割り込ませて聞いてきた。
そりゃあそうだろう。同じ質問を5回も6回も無視してたんだから。強攻策って奴に出られたんだ。
これじゃあ読書の続きができない。
仕方なく僕は答える。
「ああ、これは竹取物語ってお話」
「あぁ、あたしぃ聞いたことあるぅ、あたしもそのお話読みたい……。あ、でも難しかったら大変!
あたしにも読めるかなぁ? ねぇ、お兄ちゃん?」
「読めないことは無いと思うけど……、それよりわざわざ本を読まなくてもさ、竹取物語は無いけど、『かぐや姫』だったら、いくつか映像ライブラリが残ってたと思う。アクセスしてみる?」
「ライブラリかぁ、あたしアレ嫌いなの。なんだか目が回っちゃって。頭の中に直接送られてくるでしょ? あれ……酔っちゃうから……」

そういえばそうだった。せっかくの最新技術。情報を直接受信して自分の情報源として取り込むほんとに便利な機能なのに、こいつは苦手といって全然使わない。そのせいで、なんというか知性の発達が遅れている。
今の世の中、それこそ誕生から数ヶ月で成人並の知識量が得られる時代だってのに。
僕が、伊達と酔狂でわざわざ紙媒体の物語を読むのとはまた違い、妹は、情報の直接受信を受け付けない体質のため、やむなく読書漬け、映像漬けでの勉強に日々を、延々と繰り返している。しかし遅遅として進まない。
「じゃあ、絵本があったと思う。さすがに紙の絵本は手に入らないから電子版だけど……いいだろ?」
「うん、あたし『たけのとりのものがたり』読む?!」
いや、だから『かぐや姫』なんだけどね。『たけのとり』でもないし。
さっそく僕は、膨大な量のデータの中から『かぐや姫』を探し出し、妹のタブレットに送信してやった。
ピコーンと受信音が響く。
「ああ、来たよ?。読もうっと!」
これでしばらくはまた、静寂な読書の時間に突入だ。なんせ妹は読書が遅い。絵本であれ、教科書であれ、僕の5倍? いや、10倍以上の時間を掛けて精読する。いや、ほんとに精読しているのか定かではない。ときに読んだ本の内容について聞いたらちんぷんかんぷんってことも多いのだ。

「へー、お姫様じゃないのね……。んっ、3ヶ月で大人になったんだぁ……。ねえねえ、お兄ちゃん?
普通の人間って、大人になるまでに十年とちょっとかかるって言ってなかった?」
「ああ、普通はそんなもんだな」
「じゃあ、かぐや姫はちょっと特別なんだね?」
「そうかもね……。ほら、続きも読んじゃいなよ」
適当に相槌を打ち、妹を読書に促す。

「えっ! そっか、昔は人はみんな、月じゃなくって地球に住んでたんだ?。知ってた? お兄ちゃん?」
「そりゃあね」
「やっぱり、お兄ちゃんって物知りだねぇ」
それだけ言うと妹は読書に戻った。

数千年もの昔。地球は極度の異常気象と、量子発電システムの暴走によって、もはや人の住めない星になっていた。それでもわずかに生き残った人類。地球にしがみつき、細々と暮らしていた。
そして、地球を見捨てて月に移り住んだ別の人類。ふたつに分かれた人類。
それから何千年もの間、地球では文明を捨て、科学に頼らない原始的な生活をしながら何とか生きながらえていた。
一方、月では、科学文明を継続させ、どんどんと新技術を発展させていった。一見繁栄に見えた月の文明もその翳りを見せる。遺伝子操作などを行い、月の環境への適応を計ってきた人類だったが、やがて徐々にその数を減らしていった。
残っているのは妹ただ一人。

「面白かった! でもかなしいね。かぐや姫は月に帰っちゃうんだね?」
「月で生まれたんだからね。それは当然だよ」
「わたしも地球に行ってみたいな……。まだ誰か住んでるかな?」
「どうだろうね……。会ってみたい? 地球の人と?」
「うん! 会ってみたい」

地球に送った監視ロボットの映像によれば、いまなお地球には小さいコミュニティーがいくつかあり、人類はほそぼとだが、逞しく生活を営んでいる。
数ヵ月後、僕は妹を地球に送り込むだろう。最後に残された月の人間を地球に還す。それが僕の役目だ。
今まで幾人もの人々を人工授精、培養ポットで創造し、育ててきた。その誰もが病弱で、厳しい環境で暮らすに堪えない身体を持ってしまっていた。
そんな中で生まれた妹。僕のDNAを半分受け継ぐ妹は、おそらくは地球での環境にすら耐えられる奇跡のかけら。

読んでいた竹取物語は終盤にさしかかっている。帝が不老不死の薬を焼いてしまった。

『カグヤプロジェクト』は動き出す。そしてカグヤ姫は、二度と月に帰ってくることはないだろう。
地球に根を下ろし、地球人として暮らすのだ。
妹には地球で幸せを見つけてもらう。
それを見届けたら……僕は……量子コンピュータの脳と機械の身体を持つ僕は、自身の機能を停止させるだろう。
あまりにも永く生き過ぎた。あまりにも多くの人間を死においやった。
だから、この永遠の命ともお別れしよう。
帝が、不老不死の薬を焼いてしまったように。

?fin?


たけじんさんのコメント
をを、SFだぁ。 僕の存在自身と、彼女が投入される地球の現状が気になりますが。

たけじんさんのコメント
説明無しに状況を想起できる文章力は、大したものだと思います。ええ、動画が目の前を流れます。 SF的アイデアは、もう少し時間をかけると、境界線がはっきりしたのでしょう。でも本体だけで、十分な手ごたえです。 ただ、人工飼育したハイイロガンをツンドラの野にいきなり放つ感があって、ちょっと残念。 (硬めのSFって、こういうところを譲らないから嫌われるんだけど)地球に降ろすメリットがはっきりすると良かったなぁ。 ※ここで、思いつき。 月のカグヤは、筒状のポッドで育成されている。(まるで竹のような) 月世界人とは違う、地球人のDNAから生成したもの。 地球上の人類は、そのDNA片が必要になっている。 地球上の人類から、カグヤにラブコールが飛んでくる。 実は、見た目が地球人と月人では違う。 カグヤは見た目が同じ地球人がいる、地球へ行くことを願う。 地球から、回収ロケットがやってくる(最後のアポロだったりして) カグヤは地球へ還る。 なんてね。 SF書いてくれたから奮発します。

6 ● meefla
●80ポイント

終わりなきクエスト


私は黒い森の中を彷徨っていた。すでに日もとっぷりと暮れ、手にした松明の明かりだけが眼前の細い道を照らしていた。
背後から気配がした。殺気だ。
私は足を止め、松明を岩の間に挟んだ。右手を剣の柄にかけると、ラプロヴの剣は生き物のように拍動した。私はゆっくりと振り返った。今度こそ……。
闇の中から飛びかかってきたのはゴブリンだった。ラプロヴの剣が一閃し、ゴブリンの頭と体を両断した。
「お前じゃない」
思わずつぶやいた私の目は、ゴブリンの頭から生えている角に釘付けになった。何度目かの誘惑に耐え、私は再び松明をかざしながら歩を進めた。まだ夜は長い。

村の宿屋に戻ると、宿の主人が出迎えてくれた。
「で、今夜の首尾はどうでした?」
私は首を横に振った。
「ゴブリンが一匹だけ」
主人は嬉しそうに、
「お酒を用意してますぜ、旦那。一杯やってくだせえ」
「ああ、頼む」
私が宿屋の大テーブルに腰をかけるかかけないうちに、大ジョッキに入れられた地酒が出てきた。辺境の村だが、酒の味だけは都に優るとも劣らない。
「お代はご心配なく。旦那のお陰で魔物が減って、村じゅう大喜びでさあ。いつまでもお泊りいただきたいと皆が申してます」
私は無言で酒を呷った。そろそろこの村を出る頃合いか、と考えながら。
私の考えを知ってか知らずか、主人が言葉を続けた。
「いや、旦那が探しものをしているって事は存じてますよ。でも、『バンパイアの角』なんぞ、どこを探してもあるわけが……」
「黙れ」
私は剣に手をかけて、主人を睨んだ。主人はあわてて奥に引っ込んだ。
静かになった部屋の中で、私は一人、ジョッキを傾けた。
「もう10年になるのか」

10年ほど前。都で評判の美女と言えば、オキーナ・タケトリーノの娘、プリンセス・カグーヤだった。この世のものとは思えぬ美貌を、女神にたとえる者もいたほどだ。
求婚者は跡を絶たなかったが、プリンセス・カグーヤは全ての求婚者に難題を出した。それは、『ユニコーンの牙』や『ピクシーの卵』や『アルカディアの青い薔薇』など、伝説にも語られていないような稀有な品々だった。
そして、求婚した私にプリンセスの出した難題が、『バンパイアの角』だったのである。
私は『バンパイアの角』を求めて旅に出た。我が家に伝わる封印された秘宝、邪悪を祓うラプロヴの剣を携え、魔物や蛮族が跋扈する東の果て、このバナート地方を目指して。

バンパイアには何度も遭遇したが、角の生えているバンパイアはいなかった。
しかし私は諦めなかった。風の便りに聞いた所では、プリンセスの難題に対して造り物を持っていった男もいたそうだが、すぐに見破られたそうだ。それが私の心の支えだった。
それに『バンパイアの角』の存在を疑う事は、プリンセスの言葉、ひいてはプリンセスそのものを疑う事になるのだ。
そして10年。私は未だに『バンパイアの角』を探し続けている。

ジョッキの酒が底をつく頃、外では夜がしらじらと明けようとしていた。
私はふと想った。
もしかすると、もはや私の中で、プリンセス・カグーヤとの結婚なぞ、大した意味を持っていないのではないか?
『バンパイアの角』を見つける事そのものが目的となっていて、結婚のための手段という当初の意味はどうでも良くなっているのではないか?
よしんば『バンパイアの角』を見つけたとしても、それを都に持ち帰った時にはプリンセス・カグーヤが別の求婚者や異国に嫁いでいたら?

私は椅子から立ち上がり、ラプロヴの剣を鞘から引き抜いた。柄を両手で握り、剣を目の前にかざす。刀身は脈打つように鈍い銀色の光を放っていた。剣を見つめていると、心の中の邪念が祓われていくのを感じる。大きく息を吐き出し、私は剣を鞘に収めた。
私は今夜も森に出るだろう。終わりのない探求の旅を続けながら。


(了)


たけじんさんのコメント
すきだなぁ、こういうの。 あの無理難題に対処した人たちって大好きなんですよ。 またあとで、感想書きますけど、いい感じです。

たけじんさんのコメント
どの「剣と魔法の世界」の話?と見せかけてかぐや姫の無理難題だったと。 相変わらず、いい感じのものを書いてきますね。 原作でも、行ったきり帰ってこないのか、遭難したのか、行方不明な人がいますが。 世に宝は多かれど、実物を見たもの少なし。って感じですね。 剣と魔法の世界と、SFの世界は扉ひとつで繋がっています。 外伝という位置づけは、一番沿っている感じです。

meeflaさんのコメント
高評価、ありがとうございます。 怒涛のSF路線も考えたんですが、本家竹取物語が元祖SFですからねー。圧倒するのはなかなか難しいです。長編だし。 ちなみに、『バンパイアの角』の発想元は <a href="http://q.hatena.ne.jp/1362675730">この質問</a> の「鬼、角」だったりします。 「鬼」をひねるとしたら吸血鬼しか思いつかなかったので。

質問者から

本日、月の出る頃に終了します。
望月では有りませんが、立ち待ちの一日欠けです。
横浜では、19:03月齢16.3です。


7 ● libros
●35ポイント

うちの課の若竹輝子を知ってるの?ああ、営業の石上さんから聞いたの。彼って、あれでしょ。腰骨やられちゃったんでしょ。有名だもん、うちの課でも。
輝子は美人かって?そうでもないわ。フツー。おっとり癒し系ってやつ?あたしなんにもできませーんって、お姫様かよって感じ。でも男ってそういうのに弱いのよね。

だけどさ輝子って、石上さん以外に四人も男がいたのよ。五股よ五股。
信じられる?全員に貢がせといて、あげくにみぃんなフッたんだって。
噂だとかじゃないわよぅ。本人から聞かされたの。頼みもしないのにペラペラしゃべってたわ。癒し系なんてとんでもない猫かぶりよ。
たとえばさ、レアものの毛皮のコートおねだりして、海外から取り寄せさせたけど、あとで偽ブランドだったってことがわかってさ。コートは即、燃えるゴミ直行。男もポイしただとか。一点もののジュエリーをオーダーメイドでつくらせただとか。
石上さんだって、なんとかいうパワーアイテムを取るためにロッククライミングしてて、事故って、腰を痛めちゃったんでしょ。なんか必死すぎて哀れよねぇ。

最近の輝子?社長の御曹司に気に入られてるわ。相当貢がせてるんじゃないかしら。でも、玉の輿に乗る気は全然ないみたい。近々退社して、実家に帰るみたいよ。御曹司がなりふり構わず引きとめてるらしいけど、無理っぽいわね。なんか「迎えが来る」って匂わせてたから、地元に本命の彼氏がいるんだと思うわ。
彼女の実家?さあ、どこだったかしら。三重県だったかな。確か言ってわ、「津市に帰る」って。


librosさんのコメント
短いしありがちな話ですが参加します。初参戦です。 極甘な講評お願いいたします。

たけじんさんのコメント
現代編としては、結構いい感じです。 読みやすいですし、ブレてないし。 せっかくだから、行けないくらい遠い街の方がよかったかも。 海外とかね。

librosさんのコメント
できれば海外にしたかったのですが、ツキに近い地名がどうしても思いつかなくて。 こういうのが大得意のたけじんさん、良いアドバイスをください。

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