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【人力検索かきつばた杯】#29?

かきつばた杯を開催します。
http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BF%CD%CE%CF%B8%A1%BA%F7%A4%AB%A4%AD%A4%C4%A4%D0%A4%BF%C7%D5

〆切は
7/29(土)23時? 自動終了期限前(質問者の都合により前後します)

お題:
「先生のお気に入り」

注意事項:
講評は希望者のみ。
投稿後にお好みの辛さ指定ください。(中辛/辛口/激辛・・・)

●質問者: GM91
●カテゴリ:芸術・文化・歴史 ネタ・ジョーク
○ 状態 :終了
└ 回答数 : 4/4件

▽最新の回答へ

1 ● グラ娘。
●50ポイント

『先生のお気に入り』

「ちょっと変わった本を見つけたんだ」
と、彼――私の主人――が切り出した時、私はまだ、事の重大さに気づいていなかった。

だから、
「ふ?ん」
と、適当に相槌を打った。

「聞いてくれないの?」
と、彼が不機嫌そうな声を漏らしたので、私は作業の手を止めて彼に向き直った。
「はいはい」
と、彼をあやすような口ぶりで。

「この本、『先生のお気に入り』ってタイトルなんだけど……」
それを聞いて私の鼓動が早くなる。
――まさか! いや、そんなはずは……
「そ、それが?」
――大丈夫か? 声が上わずっていなかったか?
――不自然な間が開かなかったか?
――それより、表情は?
――汗はにじんでいないか?

が、興奮気味なのか、彼は私の異変には気付かない様子で、じっと手元に、取り出した本を眺めながらつぶやくように言った。
「なんてことのない日記なんだよね。内容は……」
「それが? どう変わっているの?」
私は、取り乱した内心を表面化しないように注意深く応じる。

「まあ、内容もそうなんだけど、これ、結構有名な出版社から出てる本なんだよ。ほら」
と言って、彼は私にそれを手渡そうとする。
ある意味、見慣れた、なじみのあるそれを。
私はそれを受け取らない。視線を彼に固定する。
視線を彼に留めて、努めて本を見ないようにし、
「そう」
とだけ、短く返す。

「なのに、検索してもこの本の情報は出てこない。天下の○×出版だぜ。オークションにも出てないし、ちゃんとISBNコードは付いてるのに、なんの情報も無いんだよ。
まるで、この本はこの世界に存在していはいけないかのように、誰一人言及せず、なんの関係性も持っていない」

どう答えてやればよいのだろう。私は思案する。
――絶版になった?
――それとも、誰かの手の込んだいたずら? 自費出版の類?
――それで彼が納得するだろうか?

――そもそも、彼は本の内容をすべて読んだのだろうか?

記憶がフラッシュバックする。頭の中の風景がめまぐるしく回る。
懐かしい思い出が、蘇り、そして消えていく。

「この本に書かれている内容がすべて事実なのだとしたら……」
彼はそう、切り出した。

――やはり……読まれている……
――やっぱり……知られてしまった……

彼は続ける。
「僕は君に謝らなければならないな」

――謝る? えっ!?
――どうして?

謝らないといけないのは私のほう……。
『あっち』の世界で、そう……『先生』に師事して、魔法使いとして過ごした私。
成り行きで、世界を打ち滅ぼそうとする魔王と対決することになり、世界を救った。
いろんな人と出会い、たくさん恋もした。
そして……先生とも……

その後、こちらの世界へ転生し、ごく普通の人生を歩んできた。でも、それは仮の姿。
もし、魔王が復活するようなことがあれば、私はすぐにそれに対処する。
たとえ、もはや魔法少女と呼ばれるような年齢では無くなってしまっていても。
それが、世界を救った伝説の魔法少女としての私の責任。

私がこの世界に来る時に、あの本も紛れこんで来てしまっていたのだろう。
師匠の、大魔法使いが書いた、自叙伝。私とともに旅をして、世界を救った先生の半生が書き綴られたあの本が。
そして、先生と私との甘いロマンスも。
そう、どちらかというと、その暴露的な内容が受けて、売れに売れたのだ。
おかげで、私は性癖を知られ、屈辱的な思いもし、『あっち』の世界に居づらくなった。

知られてしまったからには、もう彼とは一緒に居られない。
この世界に、私の居場所なんてない。
科学と文明に彩られたこの世界に、慣れ親しんでいたけれど……
帰る時がやってきたのかも知れない。
魔物の蔓延る、剣と魔法の世界へ…………

「俺さあ……」
彼の声が聞こえる。やけに遠く聞こえる。
彼が続けている。その声は、私の耳元へと流れ込む。

「『あっち』の世界では魔王だったんだよね……」

――そうだった!
魔王を追い詰めた私と先生は、それでも”とどめ”を刺すには至らず、魔王を別次元の世界へと飛ばしたのだった。
それが、『こちら』の世界…………
魔王は、ごく普通の人間に生まれ変わり、その一生涯を終えるはず。
そう、私の役目はその魔王が、その世界で、魔王として覚醒せぬように見届けること。
なんで、今まで忘れてたんだろう。

――でも……もう……

彼の瞳が怪しく光る。
「全部思い出したよ。あの、小うるさい魔法使いのおっさんと、その一番弟子にしてお気に入りだった君。
君たちは……僕を……いや、この俺様を……」

その時階下から、声が聞こえた。
「ご飯できたわよ?!」

「は?い」
「すぐいく?」

と、そこで、私たち兄妹は、あっさりと元魔王の夫と元魔法少女の妻という仮面を脱ぎ棄て、設定を破棄し、仲の良い兄妹へと戻った。
兄が、その本を机の上に投げ捨てた。
私たちの父親が書いた、全然売れていない小説、『先生のお気に入り』。
大手どころか、誰も名前も知らないような出版社で、ほとんど自費出版に近い形で出版されたその本を。
父親からは是非読むようにと言われたが、まだ、どちらもその内容を確認せずに、こうやって遊んでばかりいる。
?fin?


グラ娘。さんのコメント
また、つまらぬものを書いてしまった…… こうひょうは、おまかせ!

GM91さんのコメント
いえ、なかなかつまってますよ。 講評は・・・また後日!

GM91さんのコメント
講評です。 着想というか筋書きはいい感じですね。「あっち」とかでぼやかしてるのがちょっと物足りない感じ。あと、お題の処理がちょっとだけ甘いかな・・・。

2 ● グラ娘。
●70ポイント

『先生のお気に入り?20年後の真実』

午前二時、踏切にスコップを担いで行った。
集合場所を現地から離れた場所に設定したのは、少しでも隠密性を高めるため。
集合時間や場所のチョイスは、趣味というかバンプオブチキンの影響も少しあった。

すでに来ていたヒロと、遅れてきたユージ。これで3人揃った。
いざ、決行の時だ。

「わくわくするなぁ」
「ああ、昔を思い出すね……」

こうして集まったのには理由がある。すでに、20年以上も昔。
俺たちは、仲の良い悪がきグループだった。
そう、忘れもしない小学6年生の時。




「なあなあ、ミサコのやつがさ、大事そうに抱えているあのノート」
突然ユージが切り出した。
「ああ、あれ?」
ヒロもそれに食いつく。一部どころか、結構うわさになっている。
俺も、実はひそかに気にしていた。
先生が大事そうに持ち歩いているノートのような手帳のようなその一冊を。
「あれって何が書いてるんだろうな? 見たくねぇ」
「言われてみれば気になるなあ」

と、3人の意見が一致した。
体力自慢で、親分肌のユージと、逃げ足だけはめっぽう早い、理論派のヒロ。
それに、取り立てて特徴は無いものの、鍵屋の息子という唯一のスキルを持つ俺。
作戦は数度に渡って展開し――つまりは何度も失敗したのだ――、最後の最後、卒業式を迎える数日前に、成功を収めた。
深夜に職員室に忍び込んで、ミサコ、つまりは俺たちの担任の机のカギを開け、秘密のノートを奪い取った。

「なんだこれ、全然読めねえや」
真っ先に、匙を投げたのは、ユージだった。
俺と、ヒロはなんとなく読める個所もあった――というか、ほとんど読めたのだが――ものの、ユージに従って、事細かに読むことを放棄した。
それは、おそらくは日記だったのだろう。難しい漢字と達筆で書かれたそれは、確かに小学生が読むには少し難解だった。
そして、それよりは、なんとなくの後ろめたさが、それを読むことを消極的にさせていた。

結局、そのノートの扱いに困り、卒業イベントであった、タイムカプセルの中に、ユージのカプセルの中に入れて、埋めてしまうことで証拠の隠滅を図った。

その後、何度か小学校に足を運んだこともあったが、ミサコ先生には卒業以来会っていない。風のうわさでは、俺たちの卒業後に、退職し、田舎へ帰ったという話も聞いた。



あれから、30年。あの時のタイムカプセルが掘り出されるという連絡が同窓会の知らせとともに来た。
当時の仲間たちには、ミサコのノートの存在を覚えているものも多いだろう。
だから、俺たちは、皆で掘り出す前に、先に自分たちだけでタイムカプセルを掘り出し、更なる証拠の隠滅を図ることを計画したのだ。
現在は、土建屋で親方をやっているユージ、フィールドワークが盛んな考古学者のヒロ、それに親のすねかじりをいまだに続けている俺と、目標の物を掘り出し、その痕跡を隠すのにはもってこいのメンバーに成長している。
まあ、俺の立ち位置が微妙ではあるが、施錠された校門のカギを開けるくらいの手伝いはできる。

懐かしい校庭。暗闇で見る校舎は、それでも俺たちの記憶に甘酸っぱいものをこみ上げさせた。
スコップで掘り進む。それは簡単に見つかった。
当時、流行っていたシール、それも同級生から半ば強引に取り上げたものを貼りまくったユージのカプセル。

中を開けると、ユージの宝物だったガラクタたちとともに、色あせた、懐かしいノートがそこに収まっていた。
なんとなく、そうしなければいけないような気がして、3人寄り添って、懐中電灯の灯りでそのノートを読む。
特に意味もなく後ろのページから。
四分の1ほどは、白紙が続き、ふいに文字で埋め尽くされたページが出てきた。
俺たちがこのノートを、略奪した前日か、数日前くらいに書かれた内容なのだろう。
当時の記憶にあるような達筆ではなく、どちらかというと子供じみた、幼い文字でそれは綴られていた。

ほんっとに悔しい。折角夢が叶って教師になれたのに。
でも、卒業まではなんとか持ちそう。
最後のクラスだからというわけじゃないけど、今の生徒たちってなんだか、いいのよね。
わたしの一番のお気に入り。
ユージとか、ヒロくんとか、ややこしい、面倒くさい生徒もたくさんいるけどね。本当は皆いい子。
アキコちゃんだって、カオリちゃんだってノブくんだって、みんなみんな私のお気に入り。

皆が大きくなって立派になるところも見たかったけど、それは叶いそうにないみたい。
今でももう限界。
学校では、必死で堪えているけど、不意に痛みが襲ってくることもあるし、流石は余命半年よね。
でも、あとちょっと。
せめて、最後に受け持ったあのこ達は笑顔で送り出したい。
そのあとのことなんてどうでもいい。
だから、あと、数日。がんばってよ、私の体。
病気になんて負けないで。

がんばるぞ!


?fin?


GM91さんのコメント
講評です。 こちらも筋書きはいいですね。手紙とかも、文面がもうちょっとぐっとくるような演出があればベストでしょうか。 これもちょっとあっさりしてて損してる感じがします。

3 ● 伊吹。
●80ポイント

……うるさい。
あらゆるところから、蝉の鳴き声が絶え間なく流れてくる。
正審のコールがよく聞こえない。

そして、何かが私の足に当たった。

「ゲームセット!!」

さっきまでよく聞こえなかった正審の声が、はっきりと聞こえた。
まるで、私たちが負けたのを喜んでいるように……。

私は無言でボールを拾い、すぐ目の前のネットへ引っ掛けた。

もやもやする。別にそれほど悔しくもないし、泣きそうにもならない。
明日香が泣きながら歩いてきた。

「ごめんね。私のせいで……」

別に明日香のせいじゃないよ。
最後にミスったのは明日香でも、この試合の中で私が落とした点も沢山あるんだから。

そう言えばよかったのに、言葉が出なかった。

カウントを発表しているときに、試合前、先生の言っていた言葉が頭を過った。

『個人戦に残っているのはこの2ペアだけなんだから。勝ち残れなかったみんなのためにも全力を出し切って頑張れよ。先生も応援してるからな。』

……嘘吐き。

普通中学のソフトテニスの公式試合は先生がベンチコーチをするものだ。
でも、私たちの後ろに先生はいない。
きっと、花蓮と瑞希のペアの方へベンチコーチに行っているのだ。
それはそれでかまわない。というか当たり前の事だ。
だって、私たちより花蓮達の方が番手が上なんだもの。

『先生も応援してるからな。』

……私たちの応援なんかしない癖に。

私がソフトテニスを始めたのは、中学に入学したとき。1年生の頃からだった。
その時の監督は、今の先生とは別の先生だった。

当時、全部で8ペアある中の1番。つまり「1番手」に私はいた。
上位3ペアがAチーム。そのほかはBチームと呼ばれていた。
でもそうわけるとAは3ペア、Bは5ペアになるわけだから、当然、Bチームの試合のまわりは悪くなる。

そんなこと、特に気にしてはいなかったのだが。

ところが、あの監督に変わったとき、立場が逆転したのだ。
私たちのペアはBの2番手、つまり5番手にまで落とされてしまった。
私はその理由を、「私が生徒会に入ったことで練習に参加する時間が減ったから、あの先生はそれが気に入らないのだ。」と勝手に決め付けていた。
その通り、先生は学校で私を見つけると、「今日も練習に遅れるのか。」とか「お前ももう3年生なんだから、忙しいのもわかるが中総体に向けて練習しないと。」とかしょっちゅう言ってきた。
私はそれを、はいはいと言って軽く受け流していた。

そして今日は中総体の区大会の日。
市大会に進めるのは、80ペアいる中の、上位4ペアだけ。
そして今、私たちが負けた試合は、ベスト8を決めるものだった。

力なくベンチに戻っていく明日香の背中を眺めていると、ものすごい歓声が響き渡った。
思わずそちらの方を見ると、ちょうど試合が終わったところだった。
……花蓮と瑞希のペアだ。

そして聞きなれた応援歌が流れてきた。
「いーぞ花蓮!!いーぞ瑞希!!もう1勝!!!」
……勝ったのか。

その時花蓮と瑞希がしていたのはベスト4決めの試合。
つまりあの2人はベスト4に残ったのだ。
それは、歴代の先輩たちが果たせなかった「市大会出場」を意味していた。

……悔しい。
1年のときは私たちの方が番手は上だったのに。

私は自分の未熟さと、情けなさに無性に腹が立った。
謝らなければいけないのは、私の方だ。ごめんね、明日香。

大会から帰ってひと段落つくと、私はいつものように日記帳を広げた。
これを書き始めたのは中1の時だ。
そのため、部活に関する事がずらりと並んでいる。
先輩がどうのとか、校内戦がどうのとか。
2年の半ばほどから、内容ががらりと変わっていた。
ちょうど、生徒会に入った頃からだ。
それは、「愚痴」としか言いようのないものだった。

『花蓮と瑞希は先生のお気に入りペアに昇格した。』


そしてまた、似たような文字が書き綴られていく。


次の日、私たちは市大会の会場へ向かっていた。
みんな初めての体験で、貸切バスの中は昨日よりにぎわっていた。
私は1番後ろの端っこの席で、ずっと窓の外を眺めている。
とてもにぎやかに過ごす気分ではなかった。

その日は、たいていボーっとしていた。
移動するときだけ動き、集合がかかったときだけに声を発し、試合のあるコートを探すときだけ目を働かせた。

花蓮と瑞希の試合が始まる。
さすが市大会といったところだろうか、相手の選手がとても強そうに見える。
しかし、花蓮と瑞希も見劣りしないほど輝いて見えた。

ラリーが始まってからも私はボーっとしていた。
あのコールが聞こえるまでは。

「7ゲームマッチ、プレイボール!!!」

始まったな、と思っていると、目の前のフェンスに勢いよくボールがぶつかった。
驚きのあまり、声が出なかった。
花蓮の打ったサーブだ。

コートにはボールの跡がしっかりとついている。
惜しくも入らなかったらしい。
それでもその跡は、サービスラインから数センチ程度しか離れていなかった。

……強い。

セカンドサーブもすごく安定している。
いつの間に……あんなに上手くなったんだろう。

瑞希のファーストはカットサーブだった。
ボレーするときに面が合わなくなるから、前衛はカットサーブをしない方がいいと言って私にはやらせてくれなかったのに。まあその通りなのだが。

しかし瑞希のボレーは全くずれてなかった。やっぱりすごい。

2人とも、「上手い」というより「強い」と感じた。
いつの間にこんなに差がついてしまっていたのだろう。

『中総体に向けて練習しないと』

突然先生の言葉を思い出した。
そして、今更のようにその言葉の意味を解き始めた。

あれは、先生から私への精一杯の忠告だったんだ。

私が生徒会で活躍している事は、先生もよく知っているはずだ。
学校の先生である以上、生徒会をやめろなんて言えるはずがない。
生徒会に入りたいと言った時も反対はしなかった。

それでも、私に成績を残してほしかったの……?

本当に練習をしないと、良い結果を残せない。
私が仕事をしている時間は、みんな練習している。
生徒会役員として活躍するだけ、みんなとの差は離れていく。
その分、人一倍努力しなければならない。

そんなことを私に伝えたかったのではないのか。


花蓮と瑞希のペアは、残念ながら決勝トーナメントには残れなかった。
この2人で無理だったのだから、私なんかが残れるはずはない。

やっと、練習の意味をつかめた気がした。
ずっと、練習なんて多少しなくても変わらないと思っていた。
だって、番手は先生のお気に入り順で決められると思ってたから。
でも違った。先生は知ってたんだ。これまでにみんながどれだけ上手くなったかということを。

その日から、私の日記に綴られていく文字が変わっていった。

『みんな、先生のお気に入り。』


蝉の鳴き声が騒々しい。
あの日の事を思い出しながら、テニスコートで練習している私の部員達を眺めていた。

「先生、このノート何?」

1人の部員が私の持っているノートを指さして言った。

「ああ……。これは私の思い出。先生のお気に入りのノートだよ。」


伊吹。さんのコメント
ソフトテニスを知っている人じゃないと分かりにくいかも…… とりあえず、前回と同じくらいの「中辛」でお願いします。

GM91さんのコメント
腕を上げたなお主。

GM91さんのコメント
筋書きOK。文章も練れてて読みやすいです。 欲を言えば、「私はその理由を?」以降のモノローグを、実際の台詞とかストーリーで表現できるといいですね。まだまだ伸びしろがあるように思いますので期待しています。これからも頑張って下さい。

伊吹。さんのコメント
ご講評ありがとうございます。 かれこれ3回目位ですかね? 今回も結構短時間で仕上げたので内容が浅かったかな、と思います(-_-;) また機会があれば参加させてください!! 頑張りますので!!((え

4 ● sokyo
●100ポイント ベストアンサー

『この夏初めてのアイスコーヒー』

先生は朝から明らかにそわそわしていた。
研究室を何度も出たり入ったりした。ノートパソコンを開いたり閉じたりもした。
先生は幾度も私の手を取り、やっぱり離した。そしてもう一度手を取ると、改めて立ち上がった。
私は知っている。先生はそういうとき、いつも私に多くを求めること。
私は、黙って付いていった。

給湯室は扉も鍵もカーテンもない。廊下からは筒抜けだ。
先生は流しの前に立つと、いきなり私の口に入れた。即物的な音を立てた。
先生はいつもよりも乱暴になった。私に何度も出し入れした。
私はそれを拒まなかった。いつだって受け止めるだけで。
表。裏。中。外。先。付け根。考えられる範囲のすべてに触れ、なぞり、こすり、磨いた。
澱は流れ、雫は輝いた。白はより白く、夏はより暑くなった。
夏休み。人の気配のない研究棟で、私たちだけがいた。

先生はコーヒーメーカーのスイッチを入れた。暗い研究室に赤い光が灯った。
夏学期の試験が終わったらコーヒーはアイスに替わる。先生は自分でコーヒーを淹れる。
私は知っている。コーヒーにまつわる先生のルール。
濃い口。薄口。ブラック。オ・レ。なんでも学生のリクエスト通りのコーヒーを淹れる先生も、今日は自身の思うまま。
先生は、戸棚からマグカップを出しかけて、すぐに戻した。代わりに奥からコーヒーグラスを取り出した。
学生になら、アイスにはグラス。夏にマグなのは先生専属の私だけ。
ドリップを見ながら、先生は腰掛けた。そしてすぐまた立ち上がった。
先生は最近退学したという噂の、学生の名前をつぶやいた。先生のお気に入り。あの人の名前。
「——が来ないゼミなど、カフェインのないコーヒーのやうだ」

私は知っている。それでも先生が、まだ心のどこかで期待していること。
だってカップがグラスに替わっても、ちゃんと個数は前のままだから。
あの人も来ればいいのに。
あの人、夏にこのゼミのアイスコーヒーなんて飲んだことないだろうに。

先生は待ちあぐねて、ひとりでコーヒーを私に注いだ。
真っ白になった私は、黒いそれを受け止める。
からん。
先生はそのまま私に口づけた。この夏初めてのアイスコーヒー。
私にとっても、先生にとっても、それは夏そのものの味がした。

もうすぐゼミの時間だ。
学生たちがやってくる音が聞こえる。その中には、もしかしたら。


sokyoさんのコメント
講評はグランデかベンティでお願いします!

GM91さんのコメント
あ?それ、販促じゃなくて反則だから?

GM91さんのコメント
高速スライダーが来るんだろうな、 と見せかけてど真ん中ストレートかい!という心境です。 ストーリーは私の守備範囲外スレスレですけど、文章というか描写のキメの細かさがBAの理由です。作中でストーリはほとんど動かないですが、奥行きの感じられる描写で唸りました。 それだけに「台詞」はもう一捻り欲しかったかも。 ここだけちょっと浮いてる感じがします。 お題の料理法は文句なしです。 トッピングはまた後日・・・。

GM91さんのコメント
色々考えてみましたが、あれですね。無粋を承知で申しますと、 センセがデキャフェのコーヒーもらったけど全然手をつけないみたいな伏線があると台詞が生きるのかもしれないですね。

sokyoさんのコメント
デキャフェってことばを初めて知った…← そっか♪ ありがとうございます☆ じゃ次の機会があったら先生がデキャフェのコーヒーをもらうっていう伏線をつくります! で、そのデキャフェ伏線を私セリフで回収します! あとその別の伏線を…(←伏線って言いたいだけ)

GM91さんのコメント
ところで、かんそうぶんまで、あと・・・

sokyoさんのコメント
いち!
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