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●質問者: 楽1978
●カテゴリ:芸術・文化・歴史 ネタ・ジョーク
○ 状態 :終了
└ 回答数 : 4/4件

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4 ● たけじん
●50ポイント

脳内マウンテン


世の中には、まあケチという人がいましてな。中でも掘割の近くの長屋に住むケチ兵衛ってやつは、そらまあ桁違いのケチでして。
毎年ケチ兵衛の長屋じゃあ、掘割で花見でどんちゃん騒ぎをすることになっとる。それでもケチ兵衛はケチなもんだから、何も出さないし、持っていかない。ってんで、宴会にも参加しない。長屋の連中にかかわるだけ損だってわけで、掘割を歩いていると、コツンと頭に当たる物がある。おやと思って拾ってみると、そいつはサクランボだ。花見も終わるころだと、サクランボもできていて、足元にいっぱい転がってた。こいつぁいただきとばかりに、あたり一帯のサクランボを全部食っちゃった。泥のついてるのも全部。満足してケチ兵衛家に帰ったものだった。
翌朝、ケチ兵衛はなんだか頭がいたい。女房に頭を見てもらうが、外から見てもなんともない。鏡を見てもなんともない。おやどうしたんだろうと、目をギュッとつむるってえと。

何かある。

なんだかわからねぇから、もう一回目をギュッとつむる。するてぇと、木の芽が見える。

を?ををを?

ケチ兵衛が何度も何度もギュッと目をつむるもんだから、女房が目の前で手を振る。ケチ兵衛は見えねぇもんだから、反応しない。女房はあせって手を振る。でも、反応しない。お前さんどうしたんだようと、女房が尋ねると。ケチ兵衛、

頭ん中に、桜が生えた。

とぼそっと言う。何だよお前さん、んなわけない、と女房が笑うが、ケチ兵衛は取り合わねぇ。

俺の目ん玉の奥を見てみやがれ。

と言いやがる。真ん丸に開いたケチ兵衛の目を覗き込むってぇと、女房があららと腰を落としちまう。あ?らほんとに桜が生えてる。それも満開。と女房はケチ兵衛に顔をくっつけたまま言っている。
評判を聞きつけた長屋の面々、ケチ兵衛の眼を次々に覗き込んでは、立派な桜だと絶賛する。そうこうするうちに、散ってしまった掘割の桜をほっておいて、今や満開のケチ兵衛の頭の中の桜の花見を始める。まあ、どうこじつけようが、桜なんてあってもなくても宴会出来ればいいというわけで。時折、ケチ兵衛の眼を覗き込む奴もいるが、宴会は勝手に進んでいく。長屋の連中の酒でほろ酔いのケチ兵衛、また目をギュッとつむると、

散り始めた

とつぶやく。何だって、とわらわらとケチ兵衛の周りに集まった長屋の連中、今度は散り際のケチ兵衛の桜の周りで騒ぎだした。散っちまったら宴会出来ねえな。散るまで近くで飲んでようぜ。とケチ兵衛の桜に登ってで暴れだす。桜のてっぺんまで登り、その上の梁のような物に、長屋の熊さんが手をかけてブラ下がったもんだから、ケチ兵衛にはたまらない。そいつは脳梁ってやつだ。

頭が痛てえ

と首から上をブルンブルンと振った。バラバラと床に落ちてくる長屋の連中。ケチ兵衛の女房は、そいつらのけつをたたいて追い出しちまった。

引っこ抜いてくれないか。

とケチ兵衛、女房に言っている。へ?と聞き返す女房に、

耳の穴から手ぇ突っ込んで、桜の木を引っこ抜いてくれ

っとケチ兵衛は言う。頭ん中で宴会なんて、かんべんしてくれと。素直な女房は、言われた通りに耳に手を入れる。触った感触が桜の木のところを、うんしょと引っ張る。ケチ兵衛は反対側に身体を引っ張る。うんしょうんしょと夫婦で引っ張り合うちに、べりべりっと音がして、お互いに反対側にすっ飛んじまった。女房は、大きな桜の木を抱えて、三和土に座り込んでいる。壁にぶつかったケチ兵衛は、それを見て、抜けた抜けたと喜んだ。

さて、頭ん中はどうなった?とケチ兵衛また、目をギュッとつむる。するてぇと、頭ん中に大きな穴が開いている。ポッカリと。大きな洞窟のような、大穴があいている。どうやら桜の根っこを引き抜いたら、大きな穴になったみてぇなんだな。

おい、洞窟がある。

女房が眼の奥を覗いてみると、そこには霊験あらたかなように見える洞窟が。うす暗い入り口の先には、鍾乳石のようなものや、きれいな水のたたえられた池なども見える。おやまあ、きれいな洞窟だこと。そのままケチ兵衛の女房、洞窟の奥へ行ってみる。そこには、鍾乳石で覆われた、宮殿のような大広間が広がっていた。お前さんきれいなところだよ、おいでよ。という女房に誘われて、ケチ兵衛も洞窟にやってきた。

おや、きれいなところだねぇ。心が洗われるようだな。

とおいおい泣きだした。うなづく女房と手を取り合うケチ兵衛。周りを見回していると、さっきまでちょろちょろ流れていた水の量が、少し多くなっている。天井から降ってくる水滴が、なにやら幻想的でまたまた美しいこと。

この景色を見世物にして、木戸賃集めたらいい暮らしができるんじゃねぇか。

こう思うと、ケチ兵衛さらに泣けてきた。女房と手を取り合って喜んでいると、洞窟の奥から音がする。振り向くと、奥から大量の水が。あっという間に飲み込まれ。




おいおい、ケチ兵衛。どうした。おい熊さんこいつはいけねぇな。死んじまってる。
八っつあん、こいつはどうなってんだ。土左衛門みたいじゃねぇか。
ああ、溺れちまったみたいだな。
そうか、ケチだけに、溺れる者は久しからずって言うじゃねぇか。
熊さんうまいこと言うねぇ。


たけじんさんのコメント
初めから白状しますが、本歌取りです。 前半は、頭山からいただいています。 それ以上の「説明は、無いのじゃ」

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