F吉とD菜がB美のところにやってきた。
F吉「またクイズ、解いて欲しいんだけど」
D菜「こんどは『試して納得クイズ』だって」
D菜はプリントアウトを差し出した。
そのプリントアウトには、紙をまるめてできた円柱を、ハサミで斜めにカットしようとしている図と、切った後でふたたび紙をひらいた、上半分と下半分の紙の図が書かれていた。そして、次のような説明がついていた。
「紙で円柱をつくり、はさみで斜めに切り、側面をひらくと、切り口は三角関数の曲線になります。」
B美はプリントアウトを読むと尋ねた。
B美「何を答えればいいの?」
F吉「説明をざっと読む限り、問題ないと思う人も多いけど、実際にやってみると『説明どおりにすることは非常に難しい』って納得するクイズなんだって」
D菜「試すのも悔しいから考えたんだけど、わからなかったの。どこがおかしいかわかる?」
B美は頷いた。
締切 3/15(火) 20:00以降 正解は下のURL。小説としてよくできている回答を高ポイントにいたします。
参考というか正解 → http://d.hatena.ne.jp/lionfan/20091019
(ご提案いただきましたので、コメント欄からこちらに移します。描写も適当だし内容も下らないので、真面目に読まないでください)
B美は頷いた。
「屏風から夜な夜な虎が出て来て困る、と言われたときに一休さんが何をしたか知ってる?」
「なにそれ?」と問い返すD菜に、F吉がドヤ顔をする。
「知ってるぜ! 『では捕まえますので屏風から出してください』って言ったんだろ?」
「そう。今回の問題と同じね。『では切りますので、触れただけで切れるハサミをください』……これが、この問題の正解」
二人はしばらく唖然としていたが、先に気をとり直したのはD菜だった。
「……ふつうのハサミじゃダメなの?」
「じゃあD菜、この丸めた紙を切るとき、どこから切り始める?」
「どこでも同じじゃない? この図なら、いちばん高い部分からかな」
「そこを、どうやって切り始めるの? スローで、できるだけ詳しくイメージしてみて」
「ふつうにチョキンと切れるじゃな……、あれ?」
首をかしげたD菜の横で、F吉が納得した顔をする。
「……ちょっと折り目をつけてやらないと無理か」
「そうね。縦に折って、そこから小さく切り目を入れてもいいわ」
-本質は既に内包されているが、これは序章にすぎないのだから -
B美は、舌なめずりをする獣を思い描きつつ、「それから?」と尋ねた。
「そこに片方の刃を差し込むとラクかな。で、真っすぐに切りたいんだから、ハサミを大きく開いて、奥まで差そう……かな……」
D菜の胸の中に、じわじわと違和感が広がる。
「おいB美、いちばん低いところまで切るんだから、そこも同じように切り目を入れていいだろ?」
「ええ、その二点を最短で結ぶ線というのが題意なのだから、構わない」
「じゃ…、じゃあ、ふたつの切り目を一気に突き通して……」
目を閉じたD菜が、想像のハサミを円筒に差し込む。その大胆な動きと裏腹に、指先はかすかに震えている。
- ハサミは十分に大きいものとする - とB美は自分だけにつぶやく。
「そして……、もう片方の刃を動かして、ハサミを閉じると……」
説明しながら、D菜の右手がゆっくりと握られていく。
「……そこが」
「え?」
「そこが問題よ。円筒を上から見て。片方の刃が直径に差さった状態から、もう一方の外接する刃を徐々に押し当てていくと……」
「あ!?」
「そう、円のままで切ることはできない。ふつうのハサミは必ず円筒を平らに伸ばしてしまうの」
「そんな……」
D菜の膝が折れる。
「そんな……、何故……?」
その肩に手を置き、F吉がささやく。
「この図を描いた人はきっと、石川五ェ門の斬鉄剣でスパッと切るようなことをイメージしてたんだろうなァ」
「あるいは、別の実験を考えていたのに、学校で簡単にできるようにと思って、紙とハサミに変更したのかも」
遠い目をしたB美が続ける。
「ロウソクを斜めに切って、魚拓の要領でインクを付けてから紙の上を転がす、とかかしら。ちょっと太めの魚肉ソーセージや、サラミでもいいわね。
どうしても紙とハサミでというなら、逆に三角関数のグラフを切って円筒を作ってみせることだってできる。
それなのに、この誰かさんは、できもしない『簡単な実験』を作ってしまったのね。
この図のとおりにやった正直者は、三角関数が三角波を作ると思いこんでしまうかもしれない。ひどい diseducation だわ。
でもD菜、あなたの教科書はきちんと訂正されてるから、泣く必要はないの」
「知ってたのか…、これが、教科書検定に引っかかったこと」
尋ねたF吉に、B美は何も答えなかった。その目にはただ、獲物を仕留めた悦楽だけが燃えていた。
B美「ハサミがどういう原理で紙を切るかを考えれば簡単よ。」(一行でネタ終了)
ハサミは二枚の刃がすり合わさって紙を切ります。
図のように円柱をハサミで挟んでもぺっちゃんこにならないと切れません。
ぺっちゃんこになると正確に円柱を斜めに切ることは難しいということ。
id:SALINGER様、そのとおりです。ありがとうございます。
(ご提案いただきましたので、コメント欄からこちらに移します。描写も適当だし内容も下らないので、真面目に読まないでください)
B美は頷いた。
「屏風から夜な夜な虎が出て来て困る、と言われたときに一休さんが何をしたか知ってる?」
「なにそれ?」と問い返すD菜に、F吉がドヤ顔をする。
「知ってるぜ! 『では捕まえますので屏風から出してください』って言ったんだろ?」
「そう。今回の問題と同じね。『では切りますので、触れただけで切れるハサミをください』……これが、この問題の正解」
二人はしばらく唖然としていたが、先に気をとり直したのはD菜だった。
「……ふつうのハサミじゃダメなの?」
「じゃあD菜、この丸めた紙を切るとき、どこから切り始める?」
「どこでも同じじゃない? この図なら、いちばん高い部分からかな」
「そこを、どうやって切り始めるの? スローで、できるだけ詳しくイメージしてみて」
「ふつうにチョキンと切れるじゃな……、あれ?」
首をかしげたD菜の横で、F吉が納得した顔をする。
「……ちょっと折り目をつけてやらないと無理か」
「そうね。縦に折って、そこから小さく切り目を入れてもいいわ」
-本質は既に内包されているが、これは序章にすぎないのだから -
B美は、舌なめずりをする獣を思い描きつつ、「それから?」と尋ねた。
「そこに片方の刃を差し込むとラクかな。で、真っすぐに切りたいんだから、ハサミを大きく開いて、奥まで差そう……かな……」
D菜の胸の中に、じわじわと違和感が広がる。
「おいB美、いちばん低いところまで切るんだから、そこも同じように切り目を入れていいだろ?」
「ええ、その二点を最短で結ぶ線というのが題意なのだから、構わない」
「じゃ…、じゃあ、ふたつの切り目を一気に突き通して……」
目を閉じたD菜が、想像のハサミを円筒に差し込む。その大胆な動きと裏腹に、指先はかすかに震えている。
- ハサミは十分に大きいものとする - とB美は自分だけにつぶやく。
「そして……、もう片方の刃を動かして、ハサミを閉じると……」
説明しながら、D菜の右手がゆっくりと握られていく。
「……そこが」
「え?」
「そこが問題よ。円筒を上から見て。片方の刃が直径に差さった状態から、もう一方の外接する刃を徐々に押し当てていくと……」
「あ!?」
「そう、円のままで切ることはできない。ふつうのハサミは必ず円筒を平らに伸ばしてしまうの」
「そんな……」
D菜の膝が折れる。
「そんな……、何故……?」
その肩に手を置き、F吉がささやく。
「この図を描いた人はきっと、石川五ェ門の斬鉄剣でスパッと切るようなことをイメージしてたんだろうなァ」
「あるいは、別の実験を考えていたのに、学校で簡単にできるようにと思って、紙とハサミに変更したのかも」
遠い目をしたB美が続ける。
「ロウソクを斜めに切って、魚拓の要領でインクを付けてから紙の上を転がす、とかかしら。ちょっと太めの魚肉ソーセージや、サラミでもいいわね。
どうしても紙とハサミでというなら、逆に三角関数のグラフを切って円筒を作ってみせることだってできる。
それなのに、この誰かさんは、できもしない『簡単な実験』を作ってしまったのね。
この図のとおりにやった正直者は、三角関数が三角波を作ると思いこんでしまうかもしれない。ひどい diseducation だわ。
でもD菜、あなたの教科書はきちんと訂正されてるから、泣く必要はないの」
「知ってたのか…、これが、教科書検定に引っかかったこと」
尋ねたF吉に、B美は何も答えなかった。その目にはただ、獲物を仕留めた悦楽だけが燃えていた。
id:ttamo様、小説風回答、ありがとうございます!! 楽しみました。
B美ちょっと意地が悪いですね・・・。
id:ttamo様、小説風回答、ありがとうございます!! 楽しみました。
B美ちょっと意地が悪いですね・・・。