【謎解き・説明解読クイズ・ニッポンの軽くて重いプレゼント】

Ｆ吉「今回はクランベリータルトが重要なヒントになってるな」

　さすがに、クイズ慣れしてきたのか、伏線を読むことに長けてきたＦ。

Ｄ菜「じゃあ、わかるのね？」

Ｆ吉「とりあえず、ガンダム、クランベリーで検索したら、いろんなメニューが出て来たよ」

　CELESTIAL decadeフェア（『ガンダム00』10周年記念）等。

Ｆ吉「瑠璃色の勿忘草なんて、刹那とマリナの二人の関係を思い出したら涙なしには語れないね」

Ｊ尼「わたしはロックオン兄弟推し（どちらかというとライル）なので、宇宙に舞う葉桜～グリーンミント＆クランベリー～　に興味があります！」

Ｄ菜「ちょ、何言ってるかわからないんですけど」

Ｂ美「『蒼く輝く炎で』ノンアルコールver.　もいいわね。ケリィさんのヴァル・ヴァロは作品（0083）に無くてはならない存在だもの」

Ｄ菜「Ｂ美まで！」

Ｆ吉「でも、ガンダムは一旦忘れようと思う。クランと聞いて思い出すのは、グラン只野さんだね。だから答えはベリーダンスに掛かってると思う。ダンスと言えば、フラ、フラといえば、ハワイ、ハワイと言えば、レイ。答えはレイだ！！」

Ｊ尼「ビジュアル的にはほとんど正解！！」

Ｄ菜「なんで辿り着いた！！」

Ｆ吉「レイは、本来心を込めて花を摘んで、作るんだ（要出典）。ハワイの伝統だよ。日本人はハワイが大好きだからもはや日本の伝統と言っても過言ではない（過言）。お葬式でも使うから、Ｊ尼の『ソノプレゼントヲモラウヨウナ事態ニ』なりたくないという発言とも一致する。それに過去には、貝殻、イノシシの牙、犬の歯、骨、鳥の羽根、髪の毛などが用いられていた（有出典）んだよ」

Ｄ菜「髪の毛は重い！」

Ｆ吉「ハワイ帰りの人にプレゼントとして貰っても、どうしていいかわからない。いや、お前は楽しかっただろうけど、俺が貰ってどうすりゃいい？　ってなるだろ？　まさに自己満足の押し付け！」

Ｊ尼「もちろん正解ではないですけど」

Ｆ吉「そうだと思った。Ｄ菜はわかる？」

Ｄ菜「日本っていうところが完全に抜け落ちてるわね」

Ｆ吉「じゃあやっぱりジャパニーズカルチャーのガンプラ？」

Ｄ菜「違うわよ。カラフルで、日本といえば、おはじきでしょ？　さんすうおはじきとか、なんだか勉強を強いられているようで重いわ。ひとつだと軽いけど、千個ぐらいあったら重いし」

Ｊ尼「なぜ、１０００という数字がでてきたのでしょう？」

　Ｂ美は呆れたという顔をして切り出した。

Ｂ美「答えはこれでしょ？」

　Ｂ美は、クランベリータルトからクランベリーをひとつ取ると、地面に埋めて、気を注いだ。みるみるとクランベリーが育ち、花が開く直前まで至る。

Ｂ美「この、茎、萼、花弁が何かに見えない？」

Ｄ菜「鳥みたいにも見えるわね」

Ｂ美「そう、鶴ね。一説には実を鶴が好むからとも言われているけれど、クランベリーのクランって鶴っていう意味なのよ。で、鶴と聞いて思い出す日本の伝統の品は？」

Ｄ菜「鶴の恩返し！」

Ｆ吉「なるほど、鶴が恩返しに織った反物か、確かにあれには羽が織り込まれてるから物理的には軽いけど、精神的には重い。覗いてはいけませんなんて生殺しの状態にはなりたくないのも道理だね。わざわざ自分で売りにいかなきゃならないから、有難迷惑でもある。メルカリにしろ、ヤフオクにしろ、出品って意外と手間がかかるから、傘地蔵みたいに、欲しいものを置いてってくれるほうがありがたいね。そういえば、被災地とかでも、古着とか生鮮食品とかは送られても配布に困るって話をニュースでみたね」

Ｊ尼「ワザト避ケテマセンカー？」

Ｄ菜「あ、Ｊ尼の日本語が流暢じゃなくなった」

Ｆ吉「そういえば、完成品が意味がないっていうのは、パズルとか塗り絵とかでもそうだよね。『永遠の愛』を花言葉に持つ、キキョウのパズル（50万ピース）とかの完成品送られても困るかも」

Ｄ菜「ブーゲンビリアの『あなたしか見えない』も重いわよ。5000兆ピースのパズルだともっと」

　Ｂ美は、Ｆ吉達を無視して答えについて説明を始めた。

Ｂ美「答えは千羽鶴ね。折り紙なら安くて買えるけど手間がかかる。けどその手間と気持ちを重要視するものだから完成品を買っても意味はないわね。入院時にクラスメートみんなで折るぐらいなら美談だけれど、一人で作ったら少しばかり重いプレゼントになるし、そもそも怪我とか病気とかしたくはないわね」

Ｊ尼「クランベリータルト、食ベマショウカ」




おわり。

「ご協力くださーい」
バス停を降りると、こんな声が聞こえて来た。駅前でおそろいのTシャツを着たグループが、行きかう人に声を掛けている。それぞれ、手にカラフルな紙片を持っているようだ。
「おねがいしまーす」
改札に向かう私にも、声がかかった。青いTシャツには、”よしえちゃんのために”と白い字が書かれている。
「あの、心臓手術をするよしえちゃんのために、千羽鶴を作りたいんです。協力してもらえませんか」
え、折り鶴。ま、時間はあるけど、ねぇ。
「それ、何のために折るの？」
「よしえちゃんのため、です」
いや、だから。
「その、メリットは？この折り紙代を、折り紙買わずに現金にして上げたら？もらっても邪魔でしょう？千羽も」
ボランティアスタッフだろうと思われるTシャツの若い女性は、私にこう言った。
「いえ、折り鶴を折ることでお金が発生するんです。ですから、我々はこの活動をし」
「どういうこと」
「ご説明します。こちらへどうぞ」
すぐ近くに簡易型のテーブルと、ベンチが置いてある。そこに案内された。テーブルには、メガネの青年が座っている。彼も同じ青いTシャツだ。
「こちらはIT関連スタッフの里見です。彼が概要を説明します」
里見くんが右手でベンチを案内する。メガネの向こうに理知的なイケメンを見て取った私は、思わずそのまま座ってしまった。
「ご興味を持っていただいて、ありがとうございます。ご説明させていただきます。突然ですが、仮想通貨ってご存知ですか？」
急に、思いもよらない単語が飛び出して、私は戸惑った。仮想通貨？一般生活には全然関係ない単語じゃない？
「か、仮想通貨ですか。最近、ビット、ビットコインとかなんとか」
「そうです、そのビットコインも仮想通貨の一つです」
里見くんは手元のタブレットを私に向け、画面にタッチした。上に”仮想通貨”と書いてあり、下になにかイラストが描いてある。
「普通の仮想通貨は、個人で利用するのには、ウォレットという仮想財布から出し入れします。ここに、買ったり貰ったり採掘したりした仮想通貨を納めます」
「はあ」
「ネット株の口座みたいなものです。そこに、○○株を何株持ってます、と登録される感じなんです」
はあ、それが鶴とどう関係が。
「このウォレット、紙にすることもできるんです」
「え、なんでそんな」
「実物で取引したいひともいるんですね。でも、デジタルな保証をするために、紙が暗号化されてます。公開鍵と秘密鍵という二つの数字で、紙を世界で一枚に特定します」
「その紙に、デジタルの世界の価値をくっつけるのね」
里見くん、眼鏡越しに最高の笑顔を見せてくれる。
「すばらしい、よくわかりましたね。そうなんです。そこで、我々は、この折り紙にその鍵を印刷しました」
里見くん、横に置いてある携帯金庫から、一枚普通の折り紙に見える正方形の紙を取り出した。
「表は普通の折り紙です。裏に秘密があります」
裏返すと、小さなシールが貼ってある。
「このシールに書かれているQRコードが、公開鍵の数字になっています。そして、このシールを剥がした下に、秘密鍵が書かれています」
「はあ」
「シールを剥がして、鶴を折ってもらいます。すると、秘密鍵は、このあたりに納まるので、鶴を完全に開かない限り手に入りません」
「そうですね」
「さらに、完成した鶴の翼と胴をこのシールで貼ります。シールを剥がさないと、秘密鍵を見に行けませんよね」
「そうですね」
「こうして出来上がった折鶴は、ウォレットとして通用します」
「ということは、この鶴にお金を入れられるということ？」
「すばらしい」
里見くんは立ち上がり、拍手をしている。
「一度でご理解いただけるとは、素晴らしいです。そうなんです、一羽一羽に価値を与えられるんです」
「え、でも、そのお金は？私が払うの？」
「いえ、スポンサーに出してもらいます。えーと」
「私？武本と言います」
「武本さんが、この広告を見て、折鶴を折ってくれたという画像をスポンサーに送ります。その画像に対して、一羽約１００円相当の仮想通貨をウォレットに登録してもらいます」
なるほどね、広告料なのね。
「やってあげる。何枚折ればいいの？」
「一人一枚なんです。スポンサーとの契約で」
「そうなの、残念ね」
「では、お願いします。折っている間、広告を流させていただきます」
里見くんの手元のタブレットに、清涼飲料水の広告が流れている。私は、里見くんから折り紙をもらい、シールを剥がしてから鶴を折った。
「できました」
「では、このシールをここに貼って完成です」
貼ったわよ。
「鶴をこう持って、シールをこちらに向けてください。顔の横に、そうです。撮ります」
里見くんはスマホで私と鶴を撮った。
「では、こちらを千羽鶴に束ねます」
千羽鶴になりかけの折鶴の束が、掛かっている。
「ここの糸に通して、そうです。その上のここにシールを。これ、剥がすと剥がしたことがわかるシールです。これで、よしえちゃん以外の人には、あなたの折った鶴は外せなくなりました」
「この束、いくらになるの？」
「今は０円です。ウォレットが空なので。よしえちゃんが手にしてから、ウォレットに通貨がはいれば、10万円以上になるはずです」
そうなんだ。
「がんばってね」
「はい、ありがとうございました」
私は、駅に向かった。

千羽鶴に価値を与えるって、ずいぶん変わったことをする人たちね。そうでもしないと、いらないもの贈ってきて、なんて言われちゃうものねぇ。